Fairport Convention

Fairport Convention


68年に出たデビュー作のボーナストラック付の再CD化(’03)。
真摯なトラッド路線に入る前のフェアポートは、同時代のアメリカ西海岸のバンドのコピー、という評価があるけれど、僕的には一向に構わない。そこに漂う、そこはかとない、英国らしさが魅力。このデビュー作はIslandではなく、Polydorからのリリースで、看板シンガーのサンディー・デニーはまだおらず、リードは、後にトレイダー・ホーンのジュディ・ダイブル、後にソロとなるイアン・マシューズがイアン・マクドナルドの名前で参加している。2代目女性シンガーが有名になるあたりも、シスコのジェファーソン・エアプレイン*1と比べられたりした。


暗い部屋でテーブルを囲んだメンバーのジャケットが素晴らしいが、アメリカの音にあこがれて、自分たちなりに西海岸風フォークロックをプレイするも、英国人としてのアイデンティティが出てしまうあたりが、逆に美しさを感じる。
エミット・ローズのメリー・ゴー・ラウンド時代のナンバー”Time Will Show The Wiser”で始まり、ディラン、ジョニ・ミッチェルのカヴァーを含むが、半数はオリジナル。いかにも英国的なソフトロックの”Decameron”のようなものもあれば、楽しげなフォークロック”If”、ブルージーな”Jack O’Diamonds”(ディラン作)もある。
ベストトラックはサイケ風味の、ジョニのカヴァー”Chelsea Morning”だろうか。
今回のCD化にあたって、ブックレットには未発表写真が多数載っているが、それまで謎の人だった、ダイブルの美麗ぶりが伺えてうれしい。
この人は本作後脱退、クリムゾンのイアン・マクドナルドのGFだったこともあって、ジャイルズ、ジャイルズ&フリップのレコーディングに参加、クリムゾンの初期の名曲”I Talk To The Wind”を歌ったりしていた*2。その後トレイダー・ホーンを結成している。


ボーナストラックは4曲。”Suzanne”はレーナード・コーエンの有名な曲で、BBCのライヴでもプレイしている。”If I Had A Ribbon Now”は幻のデビューシングルで、あまりにポップソング過ぎるとキャンセルになったらしいが、これはこれで十分フラワーな出来だ。
”Morning Glory”は、この時代にいろいろな人たちに、よく取り上げられたティム・バックレーの名曲だが、これは仏のTV番組でのライヴ。リコーダーはダイブルが吹いている。”Reno、Nevada”は、マシューズがソロでも取り上げる*3リチャード・ファーリナの曲。これも音がこもったライヴのようだ。



この4曲のために買いなおす事はなかったか。ただブックレットはレアかも。

*1:言うまでもなく、2代目はグレイス・スリック

*2:かつてリリースされていた「新世代への啓示」というベスト盤で聞けた

*3:2枚目の「Tigers Will Survive」