このスティール・ギターを聴け! 前編

【introduction】
好事家の方以外は、なんだかよくわからないセレクトですが、スティール・ギターの入った曲ばかり集めました。スティールが前面に出た曲もあれば、あくまでも「歌」の脇役に徹した曲もありますが、意識しなくても、僕の耳はスティールを追っているのです。専門的なテクニカルな事は一切わかりませんが・・・
そもそもスティール・ギターという楽器はハワイアンやカントリーの世界では花形楽器だった時期があって、ロックとカントリーが融合されたバーズの「ロデオの恋人」や、ディランの「ナッシュヴィルスカイライン」以降、ロックの世界でも耳にする機会が増えました。特に70’sは、この楽器がカントリー・ロックの隆盛と共に大いにもてはやされたようです。80’s以降は、カントリー・ロックというジャンルが消滅したのに伴い、カントリーの世界ではまだしも、ロックの世界では聞く事がなかったのですが、90’sも半ばを過ぎて、バック・トゥ・70’sのムードが高まった頃、リアルタイムでも、そういった音を出す人たちが増え(CDのリイシューというのが一般的になった事も理由でしょう)、現在では再びわりと耳にする機会が多いです。 とはいっても、ここに収められたのは、ほとんど70’sの音源です。


1)Laughing:David Crosby
いきなりこの曲でスタートですが、ジェリー・ガルシア(グレイトフル・デッド)のスティールというのも特色があります。カントリーっぽくは聞こえず、どこかサイケデリックな浮遊感を漂わせます。クロスビーの最初のソロ「If I Could Rember My Name」(’71)からのこの曲は、ガルシア、ビル・クリューツマン(ds)、フィル・レッシュ(b)といったデッドの面々が参加したもの。クールな美しさにガルシアのスティールとジョニ・ミッチェルのコーラスが一役買ってます。この音源はCS&Nの4枚組ボックス「CSN」からで、69年録音。別ヴァージョンのようです。
If I Could Only Remember My Name


2)Kiss Money:Bob Neuwirth
74年にアサイラムから出たファースト「Bob Neuwirth」から。それまでディランのロード・マネージャーとして名のみ知られた人ですが、その人脈を生かした豪華なバッキングが聞きもの。ここではベン・キース(ニール・ヤングとの仕事で知られる)のゆったりとしたスティールが実に気持ちいい。リード楽器はスライドgですが、隙間を埋めるようなスティールの使い方がまたいいのです。
Bob Neuwirth


3)Delta Dawn:Dianne Davidson
ジェイナスから出した3枚のLPはどれも味わい深い巨漢の女性ssw、ダイアンのこれは、2枚目「Backwood Woman」から。ナッシュヴィル録音で、エリア・コードの名うての面々がバッキング。ウェルドン・ミリックのスティールと互角に張り合う、マック・ゲイドンのスライドも聞きものです。ヘレン・レディが73年にカヴァーして#1ヒットとさせるのと同じ曲。作者はアレックス・ハーヴェイとラリー・コリンズ。そもそも情報が少ない人だけど、詳細は
http://d.hatena.ne.jp/Finyl/20050117#p1 参照


4)紙ヒコーキ:荒井由実
すいません、P5さんまた入れてしまいました(^^;
日本語によるカントリーロックの最高峰として紹介せずにはいられない。本来持ち味ではないユーミンのこういったカントリーロックを十分聞かせてしまうあたり、キャラメル・ママの演奏には説得力があるのかもしれません。スティールは日本人では、このジャンルの第一人者ともいえる、はちみつぱいの駒沢裕城。♪とりとめのないものに、どうしてこんなに惹かれるのだろう・・・ とは、まさに名言。
天才少女(と呼ぶにはトウが立っていたが)ぶりを発揮したデビュー作「ひこうき雲」から。
詳細は http://d.hatena.ne.jp/Finyl/20041231#p2
ひこうき雲


5)It’s All Over Now:Catfish Hodge
キャットフィッシュ・ホッジというと、リトル・フィート解散後、ポール・バレルが組んだブルーズバスターズの人という印象が強いけど、活動歴は古い。これは75年に20 Centuryから出た「Soap Opera」からで、なんとボビー・ウーマックの見事なカヴァー。ゆったりとしたスティールは、フライング・ブリトウズのスニーキー・ピート・クレイナウ。コーラスは後に角川映画の「汚れた英雄」の主題歌を歌う、ローズマリー・バトラーで、この人はジャクソン・ブラウンのコーラス隊として注目された事もあった。


6)ホリディ:やまがたすみこ
熱心なファンサイトでは今もスミ・コールが続いてるのにはビックリだが、ルックスも含め僕の十代の心を大きく揺さぶった人(^^) 高校生でデビューした(太田裕美と同い年)フォーク少女は、ドラマに出演して歌ったりもしたが(残念ながら世代が少し早い)、音楽的にはこのフォーク時代というのが、僕には全くダメだった。ポップになってゆく「サマー・シェイド」以降わずか4枚で結婚引退(パラシュートの井上鑑夫人)してしまったが、この時期が丁度リアルタイム。現在は童謡、アニメ、CMなど裏方の仕事がちらほらで第一線復帰が待たれる。このカントリー・ロックはファンの間では人気の「虹」(’73)から。聞けばわかるがニール・ヤングの”週末に”風で、思わずニヤリ。♪頭の中はロバータ・フラック、ぐるぐる回って聞こえてました・・・ という歌詞もまた、グッと来る。逆に僕にはスミの歌が回ってたけど、ベスト盤「すみこふぁいる」(’76)より。(昨日の「サマー・シェイド」と似たようなカットのジャケですが、ビミョーに顔が違う。こっちの方が好みです、聞いてないって)
 


7)Will It Be You:Pete Sinfield
キング・クリムゾンの作詞家だったシンフィールドが73年に出した唯一のソロ「Still」から。難解な歌詞を書いて初期のクリムゾンの叙情的な部分を担ってた人ですが、いろんなタイプの曲が収められていて、非プログレファンにもOK。英国にこの人あり、といわれたB.J.コール(コチーズ)がスティールを弾くカントリー・ロック・ナンバー。
スティル


8)So Long:Funky Kings
ジャック・テンプチン(イーグルスの”ピースフル・イージー・フィーリング”の作者)、ジュールズ・シアー(後にポーラー・ベアーズ)、リチャード・ステコルという3人のsswをフィーチャーしたファンキー・キングスの唯一のLPから。アリスタというレーベルは、この時期(76年)積極的にこういったカントリーロックを全面的に売り出していました(フールズ・ゴールド、シルヴァー)。スティールは現在も第一線で活躍するメンバーの、グレッグ・リーズ。3人のsswの個性がそれぞれに感じられておもしろい。これはステコルが歌うもの。
ファンキー・キングス


9)Consumation:Claire Hamill
英国sswのクレア・ハミルのLPになぜ、デヴィッド・リンドレーが参加してるのか良くわからないが、この曲はアコギの弾き語りで、リンドレーの美しいスティールが表情を付けています。74年の「One House Left Standing」から。

後半は明日。
このセレクト希望の方にお分けします。
メール(プロフィール欄参照)かBBSまでお気軽にどうぞ。
予約(!)の方は、今週中に送るようにしますね。