Rainy Day Friend / Kenny Vance

ヴァンス 32
雨の歌#6
ケニー・ヴァンスは元ジェイ&アメリカンズのメンバーで、オールディーズ感覚にあふれた傑作「Vance32」をアトランティックに残している。名盤探検隊がなければ出会うことがなかった1枚でもある。ジェイ&アメリカンズというと、”This Magic Moment”のヒットで知られる白人のドゥ・ワップ・グループで、末期にはスティーリー・ダンのベッカー=フェイゲンもいたことで知られている。解散後の75年に出たのが、ヴァンスの初ソロの「Vance32」で、どれもがストリート・コーナー・シンフォニーと呼ばれたドゥ・ワップへのリスペクトに満ちている。このジャンルに特に詳しくないけれど、たまに聞くと本当に素晴らしく、心に染み入ってくる。
Rainy Day Friendは、CD化される前に、イーストウエストから出た長門さん監修のソフトロックのコンピに前哨戦として収められていたもの。硬いgのイントロに続いて温かみのあるやさしげなコーラス(アンダーズ&ポンシアのヴィニ・ポンシアや元アメリカンズのマイケル・クーパースミスが参加)が実にいい。スティーヴ・ガッド(ds)、リチャード・ティー(kb)、コーネル・デュプリー(g)といった当時のNYの一線級のスタジオメンの演奏も素晴らしい。
このアルバムにはもう1つ目玉があって、”Looking For An Echo”という自伝的な内容の泣かせるナンバーがそう。音楽聴いてて思わず鳥肌がたつという感覚を忘れたときに、この曲を聞くと思い出す。