夢は終わりぬ(リッチー・フューレイ)

■I Still Have A Dream / Richie Furay
I Still Have a Dream
最近Wounded Bird(この再発専門廉価レーベルの装丁はひどい。どうして誰も言わないのか?)を通して日本盤CDも出た、リッチー・フューレイの3枚目のソロ。リリースは79年。カリフォルニアの音楽がAORに侵食されつつあった時期だけに、最後の砦というか、有終の美を飾った何枚かの1枚だろう。少なくともスタイルとしてのカリフォルニア・ロックは、この辺で終わっている(スピリットが67年からなくなっていたかどうかは不明)と思う。だから80年代のウエスト・コースト・サウンドやAORは、また別のジャンルの話なのだ。
で、ヴァル・ギャレイがprodしたこのアルバムは、ラス・カンケル(ds)、リー・スクラー(b)、ダン・ダグモア(g)、ワディ・ワクテル(g)、クレイグ・ダーギー(kb)が参加した、正統的なカリフォルニア・ロック(くどい)。新旧のリンダ・ロンシュタット・バンドのメンバーによって構成されたこのバンドは、歌を引き立てる演奏という点では、おそらく当時西海岸では一番だろう。その端正な演奏に乗せて、リッチーは伸びのあるハイトーンの歌声を十分聞かせる。煩雑に針を落としたLPではなく、むしろすぐに売ってしまった(ずいぶん後になって買いなおした)こともあるので、これを傑作と褒めちぎるのは少々後ろめたいのだけれど、ポコ時代ともちがった洗練された味わいもあるし、何よりもリッチーの声がよく出ている。昔はラスカルズのカヴァー“Lonely Too Long”ばかりに耳が行ってしまったけど、大半を占めるオリジナルも強力。特に冒頭の“Ooh Child”(ヴァレリー・カーターがカヴァーした5 Stairstepsとは別曲)、“I Was Fool”(JDサウザーがコーラスをつける)、“Headin‘South”がいい。ランディ・マイズナー、ティム・シュミットの新旧ポコ〜イーグルスのメンバーが顔をあわせてハモるという夢のような共演もある。79年というビミョーな時期にリリースされながら、AOR、New Waveの影響をほとんど受けてないのも奇跡的。