ギター殺人者の凱旋(ジェフ・ベック)

Blow By Blow
■Blow By Blow / Jeff Beck
今年紙ジャケとなった75年のこのアルバムは、こんな邦題だったが、日本盤初回仕様(ソニーの得意技だけど、こういうのって歴史的価値くらいしかないと思う)の紙ジャケにもこの邦題がついた帯がついていた!そもそもハードロックとして語られることが多かったジェフ・ベックが、歌ものを捨て、オール・インストに挑戦した1枚。当時フュージョンと言う言葉はなく、クロスオーヴァーと呼ばれたサウンドだ。
元々第2期ベック・グループ自体が、ファンキーな持ち味のバンドだったが、セールス的に芳しくなかったこともあって解散させ、カクタスのリズム隊を伴って、ハードロック・シーンに回帰。そのBB&Aは日本では大きな人気を得たが、個人的には全くダメ。ファンキー・ミュージックへの思い絶ちがたく、ジョージ・マーティンをprodに迎えた(マハヴィシュヌ・オ−ケストラの「Apocalypse」を手がけたことから)本作(直接のきっかけは、若きトミー・ボーリンが参加したビリー・コブハムのソロを聞いたことと言う)の録音となった。マックス・ミドルトン(kb)、リチャード・ベイリー(ds)、フィル・チェン(b)というシンプルなラインナップは、英国の白人によるファンキー・ロックの連中(ハミングバード、ゴンザレス、アップ、アヴェレージ・ホワイト・バンド、ココモなど)との関係を考えるとおもしろい。75年当時、著名なロック・ギタリストが挑んだギター・インストゥルメンタルへの道は、かなり革新的で、当時の雑誌でも絶賛半分、戸惑い半分といったところか(革新的な名盤とはそうしたものである)。
ベック以上にミドルトンのel−p、clavinetが斬新な使われ方をしていて、リズム・セクションの自己主張ぶりも気持ちいい。
ビートルズの”She’s A Woman”を未だこのヴァージョンでしか聞いたことがない僕はモグリだけど、有名なスティーヴィー・ワンダーの”Cause We Ended As Lovers”のカヴァー(美しい)、キング・クリムゾンを思わせる”Scatterbreain”などが特にお気に入り。ラストに収められた”Diamond Dust”を聞くと、なぜマーティンがprodとして選ばれたのかがわかる気がする。