アル・スチュワート
■Orange / Al Stewart
アル・スチュワートという人も好きになったのは、リアルタイムで聞いた「Year Of The Cat」だったけど、同じ頃CBSソニーから再発された「Orange」を聞いて、その英国臭さに参った(悪い意味で)。まもなく処分してしまったこのアルバムだが、CBS時代の、つまりは英国時代の、スチュワートの代表作とされるもの。そのよさがわかるようになったのはずいぶん後だ。クィーヴァー、ブリンズレー・シュワーツのメンバーが参加していてバックに徹している。買った当時はリック・ウェイクマンの派手なプレイを期待したものだったけど、そんなのは全然ない。
今聞くとかなり湿った感じがする。日陰の湿った土の匂い。英国人がアメリカの風景に憧れてそれ風の音楽を演奏しても、結局は英国人のアイデンティティーというか、こういう湿った感じが残る。いわゆるイギリスのアメリカと言うやつ。ここでは"Songs Out Of Clay"(クラシカルなorganはウェイクマンだろう)、"News From Spain"あたりがそう。ディランの比較的有名でない"I Don't Believe You"は、ザ・バンドとのラスト・ワルツで聞いて、あああの曲だ!と思い出した。インストのタイトル曲("Once An Orange,Always An Orange")もクラシカルで英国調のナンバー。リリースは72年。prodはジョン・アンソニー。とくればやっぱりトライデント・スタジオ録音だった。