エリック・アンダースン

Blue River
■Blue River / Eric Andersen
かつてsswというと、こういう質感のアルバムが代表作として紹介されていた記憶。80'sというsswの音楽が衰退していた時期に、このアルバムに出会った僕は、ことさらそういう印象がある。よってそういった放浪する「うた」を求めて、多くのアルバムを探した経緯がある。ナッシュヴィル録音で、ノーバート・プットナムのprod。ケネス・バトレー(ds)、デヴィッド・ブリッグス(kb)、ウエルドン・ミリック(steel)ら当地の名手をバックに迎えた、カントリー・ロック風のいでたちを取っているが、タイトル曲"Blue River"(ジョニ・ミッチェルとデボラ・グリーンのコーラスが素晴らしい)や"Is It Really Love At All"のある種かすみがかった音作りは、「雪解けの朝の様な静寂を迎える」(小倉エージ)という表現がぴったりだ。唯一のカヴァーはカナダのssw、デヴィッド・ウィッフェンによる"More Often Than Not"で、ウィッフェンの名前を知らしめす1曲となった。デヴィッド・ブロンバーグの控えめなdobroをフィーチャー。dsはリック・シュローサー(ヴァン・モリソンやアンディ・プラットで知られるドラマー。そのタイトな演奏は、ラス・カンケル級だった。ニコレット・ラーソンのデビュー作にも参加していて、初来日に同行した)。ラストに収められた"Round The Bend"にはゴスペル的なニュアンスも感じられる。
72年作だが、ずっと廃盤にならず現在もカタログに残り、若い世代にsswとは何ぞやと伝えてる感じもする。間違いなくキャリアのピークだったが、次作のマスターテープが紛失し(91年に発見されCD化)、しいてはsswというジャンルの勢いをも失ってしまう。人の運命とは判らないものだ。