#4〜I Don't Want To Talk About It

邦題は”もう話したくない”。オリジナルが発表されたときから話題で次々にカヴァーされる、生まれるべくして生まれた名曲もあれば、ひっそりとリリースされ口コミで素晴らしさが広がった名曲もある。この”I Don’t Want To Talk About It”は、後者だろう。
ロケッツというバンドを前身に持ち、ニール・ヤングのソロ2枚目にバックバンドとして起用され注目されたクレイジー・ホースは、メンバーチェンジが多いバンドだった。ダニー・ウィッテン(g,vo)、ラルフ・モリーナ(ds)、ビリー・タルボット(b,vo)の4人組で、ヤング(g,vo)、ニルス・ロフグレン(g,p,vo)、ジャック・ニッチェ(p)を交えてクレイジー・ホースと名乗っていた時期もある。71年に出たファーストは、80'sに英エドセルが再発するまでレアな1枚だったので、思い入ればかりがつのって実際に聞いてみたらのどかさに拍子抜けした覚えがある。そのなかにあってこの"話したくない"は、あまり目立つことのない曲だったというのも印象。ダニー・ウィッテンは74年ドラッグ事故で命を落とし、ニール・ヤングの陰鬱なムードの"Tonight's The Night"はその事を歌っている。
Crazy Horse
その3年後にイアン・マシューズが「Some Days You Eat The Bear・・・And Some Days The Bear Eats You」('74)で取り上げている。当時日本でも出なかったLPこともあって反響は少なかったが、この頃のマシューズはアメリカに渡り、セールスは別にしてコンスタントに米sswの同時代の作品を積極的に取り上げていた。ジェフ・バクスター(当時スティーリー・ダン)の達者なac-gが聞ける。やや甘いカントリーロック的なarr。
The Soul of Many Places
75年のロッド・スチュワートの大西洋を渡っての第1弾「Atlantic Crossing」でカヴァーされたことがこの曲の評価を高めた気がする。サザーランド・ブラザーズの"Sailing"、ドビー・グレイの"Drift Away"などいいカヴァーが多いが、しっとりと歌われこの曲の素晴らしさを大いにアピールさせたのは、ロッドの歌であったことは想像に難くない。
Atlantic Crossing
元ジム・クェスキン・ジャグ・バンドでベター・デイズ、ジェフ&マリアで活動したジェフ・マルダーのソロ2枚目「Motion」('76)でもこの曲が取り上げられてるのを知ってビックリした覚えがある。熱心なファンには1枚目の人気が高く、ただ歌ってるだけのこの2枚目の評価は低いけど、なかなかシブい喉を聞かせるのは事実だ。

でも一番最初に聞いたこの曲は、リタ・クーリッジの大ヒット「Anytime・・・Anywhere」('77)からのヴァージョンなので、これも印象的。ジェフ・バクスターの弾くsteelがゆったりとして気持ちよかった。ボズ・スキャッグスの"We're All Alone"(みんなひとりぼっち、という邦題が付いていた)をカヴァーしたものがラジオでかかってて好きになった人。このLPからはテンプテーションズの"The Way You The Things You Do"、ジャッキー・ウィルソンの"Higher & Higher"がシングルカットされヒットした。