07010★★★★アメリカン・グラフィティ('73米)

アメリカン・グラフィティ [DVD]
監督:ジョージ・ルーカス
主演:リチャード・ドレイファスロン・ハワード、ポール・ルマット、チャールズ・マーティン・スミス
"煙が目にしみる"を確認する為に見出したら止まらなくなってしまった(^^)。ちゃんとした形で初めて見たのは、コンビニ、サンチェーン(ローソンに淘汰されてしまって久しい)の2Fで開かれた自主上映だったけど、あれからもう20年は経ったなあ。その後の多くの青春映画の基本形となったワザがちりばめられている。
東部の大学行きを直前まで迷っているカート・ヘンダーソン(ドレイファス)は、監督ルーカス(脚本も)の分身で、前夜になってもハイスクールの新入生歓迎のパーティーに紛れ込み、ロッカーや教室を見て郷愁に浸るある種の女々しさがある。孤独を愛し、未だ出会えぬ恋人を夢見る夢想家で、その永遠の恋人(=ファム・ファタール)がTバードのブロンド(スザンナ・ソマーズ)として登場。ラスト飛行機の窓から見える白いTバードの姿・・・ 
カートとは逆に早々と東部行きを決めたスティーヴ・ボランダー(ハワード)は、カーとの妹、ローリー(シンディ・ウィリアムス)と交際中。出発を前に、戻ってくる間はお互い自由恋愛で行こう、と宣言してローリーを怒らせる。結局古い友人を捨てて新しい友人を作るなんてナンセンスだ、と悟り東部行きを延期するのだ。ローリーはスティーヴより年下ながら、積極的にアプローチし、つむじを曲げるとなかなか戻らないキツイ性格で、自らボブ・ファルファ(ハリソン・フォード〜それにしてもあの歌はひどい)の助手席に乗り込む始末。
モテないメガネのテリー(スミス)というキャラクターは、かつてみうらじゅんの漫画に「チャーリー」としてしばしば登場していたが、身分証なくて酒屋で酒が買えないというネタはこの種の映画には欠かせなかった(「前の洪水でなくした」という台詞)。また本当に欲しいものが買えずに、いらないものばかり買うというパターンも。道でナンパしたデビー(キャンディー・クラーク)を「コニー・スティーヴンスに似てる」という文句で口説くのもおかしい(デビーは「どっちかというとサンドラ・ディーよ」とやり返す)。二人が川のほとりでデートの際スティーヴから借りた車を盗まれ、その帰りにデビーがヤギの首を死体のそばに必ず置くシリアル・キラーの話を執拗に続けるのもブラックな味わい。
主人公4人のうち一番クールなジョン・ミルナー(ルマット)は、「バディー・ホリーが死んでロックンロールは終わってしまった」なんて名台詞がある。そんなクールな彼に明らかにローティーンのキャロル(マッケンジー・フィリップス)が押し付けられるというのも面白い。ママス&パパスのジョン・フィリップスの娘で、再結成ママス&パパスにも加わったマッケンジーは、女優としては大成しなかったけど、本作と「ブルージーンズ・ジャーニー」での好演は忘れられないものがある。ジョンとボブ・ファルファのドラッグレースは映画後半のハイライトで、ブッカー&MG'sの"Green Onion"に乗せたシーンが素晴らしい(炎上した車から這い出したローリーがスティーヴに駆け寄り「行かないで」と抱きつくシーンもあり)。
メイン以外にも忘れられない人も多い。DJ役のウルフマン・ジャックはこの映画で日本でも大いに知られるようになったし、悪役のチョイ役で最初の30分で殺されることが多い、ボー・ホプキンスがファラオ団のリーダーで、ハイスクールで先生に言い寄るワケありの女生徒にキャスリーン・クインラン(「トワイライト・ゾーン」で家庭教師を演じた)などなど。音楽の素晴らしさは言うまでもないが、ビートルズらによるブリティッシュ・インヴェイジョン以前のアメリカの音楽はなんともハッピーでピースフルなものだったのだ。