う1-Joe Walsh

Look What I Did (Anthology)
ウォルシュ、ジョー:ギタリスト、シンガー
一般的には「ハードなサウンドでカントリー・ロックから脱皮させたイーグルスの全米的成功の立役者の一人」だろうけど、もちろんそんな単純な問題ではない。
1947年カンザス州、ウイチタ出身。多くのセミプロバンド(その中にはザ・クワイアのメンバーがいたパイもあった)を経て、68年にトム・クリス(b)、ジム・フォックス(ds)とジェームズ・ギャングを結成。イギリスのハードロックに強く影響されつつ、フォーク的な哀愁味を漂わせた作風は印象的だった。デイル・ピーターズ(b)にメンバーチェンジ後、「Rides Again」、「Thirds」と順調にLPをリリース。とりわけ静と動のコントラストがはっきりした2枚目の前者が代表作だが、ヒット曲"Walk Away"の入った後者も捨てがたい。この後やりたい事がこのバンドでは出来ないと、脱退ソロ活動に入る。

  • Yer Album('69,Bluesway)
  • James Gang Rides Again('70,ABC) 
  • Thirds('71,−) 
  • Live In Concert('71,−)as James Gang


脱退後ジョー・ヴァイターリ(kb,ds,fl)、ケニー・パサレリ(b)、ロッキー・グレイス(kb)とバーンストームを結成。ギャング時代の英国趣味を打ち出したファーストは、ある意味「プログレ」に近いかも。2枚目「The Smoker〜」から"Rocky Mountain Way"がヒット。ステージではトレードマークとなった、talking-moderatorを使ったプレイが印象的なブルーズ。バーンストームを解散後ソロとなった「So What」('74)をこの時期の代表作に推す人は多い。ハードロックとメロディアスなものが混在した充実作。この頃からイーグルスとステージ上で交流があり、ここではコーラス隊として彩を添える。実は「DKRC」というTV番組の観客入りのスタジオライヴだった「You Can't Argue With A Sick Mind」('75)は豪快かつ繊細なライヴ。ドン・フェルダー(g)以下アンディー・ニューマーク(ds)、ウィリー・ウィークス(b)、デイヴィッド・メイスン(kb)、ジェイ・ファーガスン(kb)、ロッキー(perc)、ヴァイターリといった夢のラインナップも魅力。ああ完全版でないかなあ。ブルーズをルーツに持ちつつ、派手で多彩なプレイも魅力といった感じのアメリカン・ロック期待のギタリストだったわけ。76年当時には。

  • Barnstorm('72,Dunhill) as Barnstorm
  • The Smoker You Drink,The Player You Get('73,−) as Joe Walsh
  • So What('74,−)
  • You Can't Argue With A Sick Mind('75,−)


で、そのソロ・アーティストとしてある程度の地位を築いた男が、バーニー・レドンの後任としてイーグルスに参加。当時のグレン・フライのコメントに「ドン・フェルダーとのコンビネーションは最高だ」みたいなのがあったけど、事実この二人が手探り状態で共演したのが先のライヴだった事を考えると、「Hotel California」の録音とその後のツアーで、すっかり息が合ったプレイを聞かせるようになった。

そのアルバムがメガヒットを記録した為、次作のレコーディングは伸び、その間レーベルをAsylumに移し再びソロ活動を再開。「ロスからの蒼い風」というまったくキブンなタイトルが付いた「But Seriously・・・」からは、"Life's Been Good"が大ヒット。映画「ウォリアーズ」の為に書いた"In The City"は、その後イーグルスの待たされた新作「The Long Run」にて再演されることになる。79年の2度目の来日でその曲は披露されたが、ヴァイターリまで同行させ、"Turn To Stone"でfl吹かせたのにはビックリした。そのイーグルスは80年活動を停止し、再びソロ活動に入るが、81年初来日。たった1回の武道館公演は、ラス・カンケル(ds)、ジェイ・ファーガスン(kb)、ジョージ・ペリー(b)にヴァイターリを加えた編成だった。同じ編成で出た「There Goes 〜」も「愛すべきならず者」なるふざけたタイトルが失笑を買ったが、いささかレイドバックしすぎか。以後も、日本ではウエスト・コースト=青い空、的な勘違いをはらみつつ、コンスタントに活動。84年にはマイケル・マクドナルドボズ・スキャッグスとのコンサートが日本で開かれたりもした。

  • But Seriously Folks・・・('78,−) as Joe Walsh
  • The Long Run('79,−)as The Eagles
  • There Goes Down The Neighborhood('81,−)
  • You Bought It-You Name It('83,Full Moon)
  • The Confessor('85,−)
  • Got Any Gum('87,−)
  • Ordinary Average Guy('91,Pyramid)
  • Songs For Dying Planet('92,−)
  • Hell Freezes Over('94,Geffen) as the Eagles


豪快なスライドを使ったロックンロールを得意とする反面、メランコリックなバラードも多い。ただ私見ながら、曲の出来にムラがあり、傑作と呼ばれるアルバムを未だ残せていない、というのはスティヴン・スティルスと共通するところ。そういえば、コロラドをベースに活動していたウォルシュの音楽に共鳴して、スティルスコロラドに移ってきた事があったし、ステージで"Rocky Mountain Way"をカヴァーしていたこともある。