■■■■突破口!('73米)

突破口! [DVD]
監督:ドン・シーゲル
主演:ウォルター・マッソー、アンディー・ロビンソン、ジョー・ドン・ベイカー
役者はそろった!アクション監督としてのドン・シーゲルの一番有名な作品は「ダーティー・ハリー」だろうが、一番充実した内容なのはやはりこの「突破口!」。今年になってやっとDVD化(シーゲル・ボックスの1枚として出たが、バラ売りもされた)された1枚。文句なしに今年の再発大賞だ。この作品のことを教えてくれたのはJICC出版から出てた頃の雑誌「宝島」で、別冊ムックの「この映画を見ろ!」だったと思う。あの頃は少し大きなところへ行けば、このヴィデオはあった。それから十数年、何度も借り、TVでやれば見た、はずなのに何度見ても新鮮にうつる。ジョン・リースの原作をハワード・ロッドマンとディーン・リーズナー(「ダーティー・ハリー」他でシーゲル作品にはおなじみ)が脚色。ラロ・シフリンの音楽もハードボイルドタッチで盛り上げるが、なんといってもキャストがいい。マッソー自身はこの映画の面白さを全く理解していなかったと語っているらしいが、飄々とした味がうまく出ている。「ハリー」で殺人鬼を演じたロビンソン(エドワード・G・ロビンソンの息子)はここでは頼りない。かわって殺し屋のベイカーのふてぶてしいこと。他にはジョン・ヴァーノン(やはり汚い役)、ジャクリーン・スコット、ノーマン・フェルフェリシア・ファー(ジャック・レモン夫人で、このあとほとんど映画界から足を洗ってしまうが、なんとも惜しい)ら。そしてなんといってもシェリー・ノース。シーゲル映画の常連的傍役で、「1シーンだけ登場してその姉御っぽい雰囲気で場をさらってしまう」(川本三郎「女優グラフィティ」)素晴らしい人だ!ストレートなアクション映画ではあるが、はじめに物語ありきで、最後まで高いテンションで一気に見せる。また射殺された警官に同僚がそっと帽子をのせてやったり、悪人のヴァーノンが少女のブランコを押してやったり、本筋に関係ないシーンが妙に心に残ったりするのだ。
Charley Varrick、Universal、1h50