#3 A Live Record

ライヴ・ファンタジア+7
●A Live Record / Camel
キャメルのような音楽は70's後半「ムード・プログレ」というやや否定的なニュアンスのカテゴリーが日本の一部のメディアでついていた気がする。確かに言いえて妙で、同じプログレッシヴ・ロックと称されるバンドの中では、必要以上に緊張感があるわけでもなく、メロディアスで、gやkbが美しいソロを取ったりするインスト・パートが充実したテクニカルなバンドだった。あと「ファンタジー*1というキーワードで語られることが多かったのも特色(今でこそ映画、ゲーム、小説などにファンタジーはあふれているが、70's当時ファンタジーは少なくとも日本では、児童文学の中にしか存在していなかった)。キャメルの代表作はポール・ギャリコの小説をテーマにした「Snow Goose」で、この作品を大部分ライヴで再現したのが78年に出た「A Live Record」(邦題:ライヴ・ファンタジア)。CD化に当たって、7曲が加えられ、「Snow Goose」は完全版となった。この部分はデイヴィッド・ベッドフォードが指揮したロンドン・シンフォニー・オーケストラとの共演になる。ボーナストラックとして加えられた部分は、他にも新加入した元キャラヴァンのリチャード・シンクレア(b,vo)、元キング・クリムゾンのメル・コリンズ(sax,fl)をフィーチャーした「Raindances」からのナンバーがあり、それ以前のダグ・ファーガソン(b)をフィーチャーした演奏と比較してもおもしろい。

僕自身リアルタイムで「Raindances」('77)を親しんだ世代だけど、その後こういう「ムード・プログレ」に対する興味は急速に薄れてしまったのだけど、去年あたりから再び興味がわいてきた次第。シンクレアが歌う曲のいくつかは、キャラヴァンというかハットフィールズ的なものを昔は感じさせたが、今の耳ではあまりそう思わない。むしろ02年に亡くなったオリジナル・メンバーのピーター・バーデンス(kb〜元ショットガン・エキスプレス)の個性の方が強く感じる。そのバーデンスと共にバンドを支えたのが、現在のキャメルでイニシアティヴをとるアンディー・ラティマー(g)で、彼のメロディアスなgとバーデンスのkbの掛け合いがバンドの大きな魅力となっている。特にラティマーの「泣き」のgは、湿り具合が日本人向けで、あたたかみがある。

さて74年から77年までの録りだめした音源を使っているので、本来ならトータル性などないはずだけど、これが見事な統一感でおもしろい。個人的には「Raindances」の曲〜フュージョンっぽい"First Light"と歌ものの"Metrognome"〜がなじみ深いが、もちろん「Snow Goose」のパートもいい。

これは75年のBBCの「Old Grey Whistle Test」から。

*1:本当はファンタシーなんだけど、めんどくさいのでファンタジーとする、今日のところは