08002 Insane Times
●Insane Times / 25 British Psychedelia Artyfacts From The EMI Vaults:VA
英EMIはほぼ10年前の97年にAt Abbey Roadシリーズで「Psychedelia At Abbey Road」というコンピレーションを出しているが、この10年で新たな発掘が進んだのかというとそれは疑問だ。ともあれ07年リリースのEMI系列の60'sサイケのコンピ。タイトルはケヴィン・エアーズの「Joy Of A Toy」に収めれた同名曲から取られている。そのエアーズの"Insane Times"はやはり飛びぬけて素晴らしい。ノイジーなマイク・ラトリッジのorganも含めて完璧。トム・ニューマンがいたことで知られるジュライの"Dandelion Seeds"('68)はMajor Minorというマイナー・レーベルからのリリース。途中のブレイク部などなかなかいいムード。気持ちが先走ったgも。この種のコンピにはかかせないトゥモロウのsitarの入った"Real Life Permanent Dream"に続いて、イプシシムスの"Hold On"とブレインの"Nightmare In Red"はBam Curusoのコンピで聞いた事がある。イプシシムスはフラ・デ・リスの変名。ファズgをイントロに使ったフリークビート。voはゴードン・ハスケル。ブレインはクリムゾンの前身、ジャイルズ、ジャイルズ&フリップの変名(?)で、67年のシングルのB面。なんともクレージーな演奏だ。
マンドレイク・パドル・スティーマーは先の「At Abbey Road」にも収められた"Strange Walking Man"('69)を再録。これはなんともメランコリックなナンバーでおもしろい。後にグリーンスレイドのマーティン・ブライリーをフィーチャー。ケン・ヘンズレーやミック・テイラー、グレッグ・レイクもいたザ・ゴッズのデビュー作から"Towards The Skies"はとり立てて印象に残らない。ペニー・ピープスのフリーク・ビート的な"Modern Village"('67)も別のコンピで聞いたことがある。モッズ的な印象も受ける。好きだ。マンフレッド・マンの初代vo、ポール・ジョーンズの"The Dog Presides"('68)は、ジェフ・ベック(g)、ポール・マッカートニー(ds)が参加したというソリッドなロックンロール。ジェフ・リンをフィーチャーしたアイドル・レースもこの種のコンピの定番。"Hurry Up John"は68年の2枚目から。一部で高い評価を受けているウィル・マローンのオレンジ・バイシクルを初めて聞いたが、"Last Cloud Home"はなんとも切ないメロディーのビートもの。ジョンは、ルルのバックにいたメンバーを含む4人組で"Is It Love?"は、先のオレンジ・バイシクルにも通じるメロディアスな感じ。これも初聞きながら気に入った。ヴォードヴィル調のボンゾ・ドッグ・バンドを挟んで、レインボー・フォリーの68年の"Sun Sing"。ビートルズっぽいということは知っていたがなかなか微笑ましい。ジェントル・ジャイアントの前身、サイモン・デュプリー&ビッグ・サウンドの"Castle In The Sky"はメロトロンを大きくフィーチャーしたBJH的なルーラルなサウンド。テイルズ・オブ・ジャスティンの"Monday Morning"('67)も「At Abbey Road」で紹介されたもの。ティム・ライスとアンドリュー・ロイド・ウエーバーという現代のミュージカルの巨匠がprodとarrしていた。意外と面白い。"Mr Commuter"は、マイク・プロクターの67年のシングル。モッズ的というかキンクスを思い出す。ちりばめられたビッグ・ネームはさすがに高いクオリティーを誇る。ホリーズの"All The World Is Love"や、ヤードバーズの"Think About It"。エアロヴォンズは米3人組でどうしてここに入ったのか不明。ムーヴのトレヴァー・バートンがprodした"William Chalker's Time Machine"('68)は、シー・フォー・マイルズのコンピで聞いたことがあったが、少々子供向けか。パーキング・ロットはポール・サミュエル・スミス作の甘いナンバーでプロコル・ハルムからの影響もあるのか?グランドホッグスのトニー・マクフィーがいたハーバル・ミクスチャーのレア曲、"Please Leave My Mind"('68)もおもしろい。クーバスの"Barricades"も「Abbey Road」で紹介されたことがある。他にもいい曲あるはずなのに。ラストはシド・バレットの"No Good Trying"。
Zonophone/EMI:ZONO20072-EU、レココレ'07/11にてレヴュー