#2バーニー・マースデン

And About Time Too
■And About Time Too / Bernie Marsden
僕が本格的に洋楽を聴き始めた77年というのは、パープルも解散して存在しておらず、元メンバーによるバンドの活動のニュースが積極的に伝わっていた頃。とは言え解散しても本家の人気はすさまじく、未発表音源が掘り起こされたり、新たなベスト盤が組まれたりという状況は、80's半ばの再結成まで続く。一方時代はハードロックに対して明らかな逆風で「時代遅れの化石」と言うレッテルが貼られたりしたことも事実。デイヴィッド・カヴァーデイルが率いるホワイトスネイクは、78年から活動を初め、ミッキー・ムーディーとバーニー・マースデンというタイプの違う二人のギタリストを配し、泥くさいファンキーなロックンロールを得意とし、この時期の最高のロックンロールバンドの一つだったが、80年代入りNew Wave Of Heavy Metalのブームが始まると、次第にポップ指向を強め、僕としてはどうでもいい存在となった。78年と80年の2枚のライヴをカップリングしたCDがかつて出ていたが、これを聞くと80年のものは、短くまとまりすぎていてよろしくない(まあ時代が要求したんだろうけど)。
前置きが長いけど、79年にマースデンがリリースした初ソロがこの「And About Time Too」。元々UFO〜ワイルド・ターキーコージー・パウエルズ・ハマー〜ベイブ・ルース〜PALといった地味なバンドをやってきたキャリアとメロディアスな曲を作る才能に長けた人なので、いわゆるハードロックのLPではなく、様々なタイプの曲にあふれている。ポップな歌ものでは、まず乾いたアメリカンなハードロックの"Sad Clown"(エンディングでtalk-boxがちらり)、ドン・エイリーのsynが大活躍する"Love's Made A Fool Of Me"、"Here We Go Again"がいい。ギタリストとしての存在感をアピールするインストも3曲あって、泣きのgをたっぷりフィーチャーしたある種歌謡ロック的な"Song For Fran"、ブルージーな"Brief Encounter"、フュージョン的な"Head The Ball"と幅広い。
当時日本では話題となっていたパウエルのソロ、もしくはジェフ・ベックのソロ的な路線を狙った部分もあるが("Head The Ball"ではエイリー、フィリップス、ブルースのソロあり)、いかんせんヴァラエティーに富みすぎていて絞れていないことは確か。
バックにはホワイトスネイクからイアン・ペイス(ds)、ジョン・ロード(kb)、ニール・マレイ(b)、更にハマー時代の同僚、エイリー(元コロシアムⅡ、現パープル)にコージー・パウエル(ds)。更に園パウエルのつながりでサイモン・フィリップス(ds)、ジャック・ブルース(b)という布陣で、組み合わせにの妙による楽しみもある。 パープルの傍系レーベル、SafariからLPを出しているアイリーンとドリーンのチャンター姉妹の強力なコーラスをフィーチャーした"Are You Ready?"は弾きまくるgと歌をこなし、更にac-p、org、clavを活躍するロードをフィーチャーしたベストトラック。
当時日本ではパープルはワーナー、パープル・レーベル閉鎖後の系列レーベルオイスターは、ポリドールが配給しており、こういうのに一枚加わりたかったトリオが設立したトラッシュと言うレーべルから、このLPはリリースされているが、裏ジャケにはホワイトスネイクのSunburst(配給はポリドール)のマークがあり、英国ではParlophoneからリリースされているという謎の1枚。当時の雑誌では(特に「音楽専科」)では取り上げられていたが、反応はほとんどなかった。日本盤ライナーは伊藤政則だか酒井康だか書いて「遅れてきたヒーロー」的な、威勢のいい盛り上げ方をしてるけど、「ハードロック・バンドのgtrが自身のバランスを取るための趣味的ソロ」と言うのが正解か。
定番度■ 偏愛度■■■

追記

最近のマースデンは、貫禄たっぷりの体型になってしまった。ムーディーは変わらずか。これは初期のホワイトスネイクスタイルの泥くさいロックンロール・バンド、M3
http://www.mickymoody.com/index.php?l=en&s=proj&u=m3