職業#3

Living in Fear
■Paperback Writer / Tempest
詩人と画家に続いて今日は物書きですな。
テンペストというとコロシアムでジャズ・ロックに専念してきたジョン・ハイズマン(ds)が、毛色の違ったものをやりたくなって、解散後73年に組んだハードロック・バンドです。元ジューシー・ルーシーでのヘヴィな歌い方がトレードマークのポール・ウィリアムス(vo)、後にソフト・マシーン、ゴングを経てテクニカルなgワークを披露するアラン・ホールズワース(g,vn)、コロシアム時代の同僚、マーク・クラーク(b,org,vo)にハイズマンの4人組です。
「毛色の違った」とは言っても明らかにジャズの影響下にある、ハイズマンのドラミングは、イギンボトムというジャズ(ロック)バンド出身のホールズワースを迎えて、ヘヴィな曲もありますが、ジャズロック寄りのハードロックとなっています。パトゥーやケヴィン・エアーズのバンドでやっていたオリー・ハルソール(g,kb,vo)を新メンバーとして加え、5人体制となった時期のBBCライヴは、現在はCD化されていますが、
Under the Blossom: The Anthology
まもなくウィリアムスとホールズワースが辞め、テンペストはトリオ編成としてラストLP「Living In Fear」('74)をBronzeからリリースします。
この「眩暈」(めまい)は、1枚目の強烈な印象に比べるとどうしても小粒な感じを受けるのですが、久々に聞きなおすとなかなか悪くないです。前作よりもジャズ志向が強まって、ハードロックな演奏と見事に溶け合っています。以前にはあったプログレ色("Gorgon"などのテーマもそうでした)は薄れ、ハルソールのgは、時にはスライドを交え、粘っこく聞こえます。prodはBronzeレーベルのボスのゲリー・ブロンですが、エンジニアにはビートルズ、アップル関係でおなじみのジェフ・エメリックが当たっていて、この"Papperback Writer"がビートルズの曲*1であることを考えるとなかなか面白いです。またハルソールがのちにビートルズへの奇妙な愛情を前面に打ち出したバンド、ラトルズのメンバーになる*2ことを考えても面白いです。シンプルなハードロックですが、うねりを見せるハルソールのgとvoは印象的。

テンペストはたった2枚しかLPはありませんが、そのダークなムードから英国ロックファンには昔から人気のバンドでした。ゲリー・ブロンのBronzeレーベルはユーライア・ヒープ(マーク・クラークもヒープに在籍していました)で有名ですが、日本盤は、日本コロムビア東芝EMI*3〜テイチク〜ビクター〜アルカンジェロからリリースされていました。現行のアルカンジェロ盤CDはオリジナルに忠実な紙ジャケですが、高いです。英盤のほうがBronzeの権利が、移行しているため、現在はSanctuary GroupのCastle Musicから出ています。

*1:66年の12枚目に当たるシングルでライヴで演奏した最後のシングル曲とか

*2:正確にはラトルズは、モンティ・パイソンエリック・アイドル、ボンゾ・ドッグ・バンドのニール・イネス、フレイム〜ビーチボーイズのリッキー・ファター、タイムボックス〜パトウのジョン・ハルジーがメンバーですが、演奏しているのはアイドル以外の3人にハルソール、アンディ・ブラウン(b)です

*3:かつて持っていたLPは70's後半に東芝から出たWBS規格でした。この時期東芝は本家EMI系以外にもIsland、Chrysalisの発売権も所有していて英国ロックのラインナップは充実していました