feeling#2

ライヴ?情念
■Feelin' Alright / Dave Mason
デイヴ・メイスンという人は微妙な立ち位置の人で、トラフィックの結成にかかわりながら、スティーヴ・ウィンウッドとソリが合わず、脱退、復帰を繰り返します。トラフィックのデビュー作「Mr.Fantasy」やセカンドの「Traffic」ではメイスン主導の曲とそうでない曲は明らかにタッチが違いますが、インド趣味そしてルーツロック志向というのは、少なくともこの時期はメイスンの方が強かったのでしょう。そのセカンドに収められた"Feelin' Alright"は、デイヴ・メイスンというソングライターを知らしめた1曲で以後数多くのカヴァーが生まれています*1
Traffic
結局ソロになったメイスンは「Alone Together」という米スワンプに根ざした英国ロックのLPをリリースしています。デラニー&ボニー、リオン・ラッセルらをフィーチャーしたこのアルバムはイギリスではHarvestから、アメリカからトミー・リピューマのBlue Thumbからリリースされています。
Alone Together
メイスンとBlue Thumbとの関係は決して良好とはいえず、結局4枚出ていますが、会社が勝手に出したライヴ盤などもあって、結果的にメイスンが訴えられる形でこの件は終わったらしいです。クラプトンの新バンド、デレク&ザ・ドミノスジョージ・ハリスンの「All Things Must Pass」にかかわったりするものの、トラブルの影がちらつくこの時期のメイスンが、CBSに移籍したのは73年のことです。
マイク・フィニガン(kb,vo)、リック・ジェイガー(ds)、ジム・クリューガー(g,vo)、ゲラルド・ジョンソン(b)の強力なラインナップが固定できたのは75年の「Split Coconuts」からです。折からのファンキー・ミュージック・ブームに呼応した音作りは、メイスンが新たな方向に向かうのか?という期待と不安もありましたが、総決算とも言える76年の「Certified Live」では、ファンク的な方向とと従来のメロウなルーツ・ロック的な方向が混在しています。
この"Feelin' Alright"は、ソロになってからもステージで取り上げていたと思われますが、ここでのファンキーな演奏には思わず腰が浮きます。これはメイスンの志向というよりも、バック・バンド(とりわけフィニガンの弾くclavinetとリズムセクションの切れに注目です)の志向なのかもしれません。

このベスト的な選曲のライヴ盤をピークとしてメイスンは緩やかに下降線をたどります。次の「Let It Flow」('77)も知られた作品ですが、どうもマイルドすぎるというか、歌謡ロック的な側面もあって、パンク〜ニュー・ウェイヴの時代ですから、なんとももどかしい印象を受けます。そして「Mariposa De Oro」('78)は、メロディーはいいのですが泣かせる曲ばかりだし、ストリングスを大きくフィーチャーした大甘の曲が目立ちました。来るべくAORの世界に呼応したような音作りでしたが、もう1枚冴えないLPを出して沈黙に入ってしまうのです。

87年に「Two Hearts」(MCA)という打ち込み中心のCDを出してカムバックを図りますが、95年に突如フリートウッド・マックに参加して話題と*2なりました。近年は元トラフィックのジム・キャパルディーと組んでた事もありましたが、これはもうノスタルジア・サーキット以外何物でもないですねえ。
Time

*1:GFR、スリー・ドッグ・ナイト、ジョー・コッカー、ルルなど

*2:リンジー・バッキンガムスティーヴィー・ニックス抜きで、メイスン、ベッカ・ブラムレットに後の3人という変則的なラインナップで「Time」をリリースしていますが、アメリカでは全くの不発ながらイギリスでは#48まで上がったようです