rock#3

Obsession
■Only You Can Rock Me / UFO
UFOで思い出すのはインターセプターやスカイダイバー*1ではなく、ましてやピンク・レディーでもなく「音楽専科」のこと。現在はJポップやヴィジュアル系バンドのグラビア誌を出してる音楽専科社が、70'sに出版してた「音楽専科」は、「Music Life」よりグラヴィアが少なく、字が多い音楽誌でした。僕がリアルタイムで接していた70's後半は、ニュー・ウェイヴに押されていたハードロック勢の記事を積極的に取り上げて、とりわけシン・リジーの日本での人気はこの雑誌からでは?と思わせるほどのプッシュ振りでした。
UFOに関しても、ポール・チャップマン(g)*2、ダニー・ペイロネル(kb)*3の参加と脱退、ポール・レイモンド(kb)の参加、マイケル・シェンカーの言語の問題(彼はドイツ人なので英語が不自由だった)から来るメンバー間とのコミュニケーション不足など、毎月の様に記事が出てた気がします。
そもそもUFOは、本国ではあまり知られておらず、Beaconというマイナー・レーベルと契約、日本とドイツで"C'Mon Everybody"をヒットさせて事もあって、初来日の日比谷野音(当初はスリー・ドッグ・ナイトとの共演の武道館公演が3DNのキャンセルでこうなりました)はライヴ化されています。70's半ばにChrysalisと契約後、日本でも過去の栄光(アイドル的な感じがあったのかもしれません)には蓋をして、無かった事にする宣伝方式が取られ、むしろスコーピオンズから加わったクールなgtr、マイケル・シェンカーを新たなギター・ヒーローにする売り出し方となりました(それが大きく実を結ぶのは数年後です)。ヒプノシスの一連のジャケットも、70's前半のブリティッシュ・ロックとはまた少し違い、ブルーズからの影響の少ない、ハードロックをルーツとしたモダン・ハードロックの登場を示唆しているようにも思えます。
77年の「Lights Out」からチキン・シャックのポール・レイモンド(g,kb)が参加し、より大胆で派手になったサウンドは、アメリカ市場を視野に入れ、78年「Obsessions」(邦題は「宇宙征服」でしたっけ?)で勝負に出ます(が結局はアメリカではチャートインせず)。このジャケットは相当ブキミで、SF映画のエイリアンの様です。
この"Only You Can Rock Me"はイントロからカチッとまとまった70's後半の英ハードロックの名曲です。巷ではパンク・ニュー・ウェイヴに押され、サウンズ誌位しか相手にされなかったオールド・ウェイヴが生き抜くためには、ポップなメロディーとメリハリの利いた構成で(いわゆる様式美というやつですな)アピールが不可欠、バンドは判断したのですね。
 
僕がこの「Obsessions」や次のライヴ「Strangers In The Nights」を聞いた頃は、まだシェンカー=ギター・ヒーローという図式に気づいていなかったので、その後80'sに入ってマイケル・シェンカー・グループが日本でもすごく注目された話を聞いてピンときませんでした(だって、コージー・パウエル(ds)人気かと思った)。80'sのハードロック・ファンはNWOHMの追い風に乗って、それまで虐げれていたうっぷんを晴らした気もしますが、昔からのファンにはテンポの速い、メタリックなリフのNWOHMにはついていけない部分もあったなんて話も後になって聞きました。そんな彼らのよりどころはその後レインボーのグラハム・ボネットを加えたMSGであり、同じようなカードを出し入れして、組み合わせの妙を楽しむかのようだったパープル周辺のバンドだったのでしょう。
結局のところ、70'sの終りにシェンカーが抜けてから、チャップマンを復帰させたりしてUFOは、80'sのヘヴィ・メタルの時代を生き抜き(このあたりになると雑誌でジャケ写を見るくらいで音は聞いてませんが)、何度か解散、再結成を繰り返しているようです。

*1:TVドラマ「謎の円盤UFO」です

*2:スキッド・ロウでUFO脱退後ローン・スターを結成

*3:ヘヴィ・メタル・キッズ