soul#2


■Soul's On Fire / Tracie
83年、僕を夢中にさせた英ロックといえば、スタイル・カウンシルの「Cafe Bleu」であり、トレイシーの「Far From The Hurting Kind」でした。ジャム解散後、元マートン・パークスのミック・タルボット(kb)とスタイル・カウンシルをスタートさせたポール・ウエラーですが、自身はPolydorと契約しながら、熱いソウルマナーをもった若いミュージシャンを発掘すべくRespondというレーベルを立ち上げています。結局のところ、LPを出すところまで行ったのはクエスチョンズとこのトレイシーだけでしたが、エイ・クレイズ、ビッグ・サウンドオーソリティーなどを含むコンピ「Love The Reason」('83)もリリースされました。
今では慣れましたが、タレントのベッキーをはじめてTVで見たとき、デビュー当時のトレイシーにムードが似ててビックリしたことがあります。

オーディション(行われていた時にはまだジャムがありました)でトレイシーが歌ったのはベティ・ライトの"Shoora Shoora"というのは有名な話で、一発でウエラーのお眼鏡にかない、ジャムの"The Bitterest Pill"、"Beat Surrender"といった末期のシングルに参加。また解散ツアーにもコーラスとして同行していました。その後"The House That Jack Built"(#9)、"Give It Some Emotion"(#24)のヒットを放ち、


満を持してリリースされたのがこの「Far From The Hurting Kind」です。バックはスタイル・カウンシルのサポートを務めていた、ヘレン・ターナー(kb/元ドール・バイ・ドール)、ケヴィン・ミラー(b)にジェイク・フラッカリー(g)、スティーヴ・シデルニク(ds)の4人。80's初期の英国を席巻したネオアコと白人ファンクの2大要素を微妙にブレンドした音作りは、今聴いても新鮮です。モータウン、スタックスに強く影響されたごく初期のスタカン(彼らはスタイル委員会という名前通り、ソフトロックからニューソウルまで次々とスタイルを変えてゆくのですが、一貫して黒人音楽へのリスペクトが感じられました)を思わせる"Thank You"もありますが、こういうorganの入った曲よりも、粘つくシンセとカッティングするg、そしてファンキーなbassの入ったもっと同時代的な、ダンサブルなファンク・チューンが光ります。シングルカットされた"Soul's On Fire"はまさにスタカンの"Money-Go-Round"の延長線にあるようなナンバーでケヴィン・ミラーのbassがカッコイイです。ウエラーがバナナラマに書いた"Dr.Love"、コステロの書き下ろし"When You Sleep"*1といったカヴァーもいいです。
それでもウエラー自身がRespondへの熱意を失ったのか、84年にはコンピを入れ3枚のLPをリリースしRespondは閉鎖。トレイシーはPolydorからダンサブルなシングルを2枚ほど出しましたが、セ−ルス的にさっぱりでシーンから消えています。その後地元であるエセックス州に帰りラジオ局のDJとして活動していたとのこと。
最近のお姿は、ここでも見れます。
さらにこのファーストに収めらた"Nothing Haapens Here But You"を今年リメイクしたyoutubeの動画もあります。

*1:コステロ自身は「Goodbye Cruel World」で"Jo Porter's House"のタイトルで再演