you#2

Child of Our Time: Trousdale Demo Sessions 65-67
■You Baby / P F Sloan
まずお約束のあの歌のことから。ジム・ウェブが書いてアソシエーション、ジェニファー、ユニコーンなどが取り上げた"P F Sloan"という曲がありますが、その中で
「あのP F スローンはいったいどこへ行ってしまったのだろう。誰も彼のことは知らないし、彼の歌を聞いたこともないという…」という一節があります。実際Dunhillを離れた67年以降、Atcoから1枚LPを出したのち、スローンは人前から姿を消してしまうのです。
P F スローンと言えば、スティーヴ・バリとのコンビ、スローン&バリとしてサーフィン・ホット・ロッドのファンタスティック・バギーズをやったり、初期のグラス・ルーツの影武者的存在(バンドメンバーは実際にいながら演奏し歌っていたのは、スローン&バリだった)だったりと、60's半ばのフォークロック黎明期を支えたブレインだったわけです。そしてソロとして65年にDunhillと契約して、"Sins Of A Family"('65)、"From A Distance"*1、"A Melody For You"、"I Found A Girl"('66)といったナンバーがあります。僕はヒット曲と書こうとしたのですが、ヒットしたのは"Sins"の#87だけでした。
パフォーマーとしては成功とはいえなかったのですが、スローンの書いた曲は、数多くのミュージシャンに取り上げられています。01年にVarese Sarabandeから発掘された「Child Of Our Times」は、65年から67年にかけて録音されたデモ集で、カヴァーするアーティストに渡される作者が歌った仮歌よりももっと手が込んでいて、完成品に近い内容です。
ママス&パパスが歌った"Another Day Another Heartache"、グラス・ルーツの"Is It Any Wonder"、"I've Got No More To Say"、バリー・マクガイアの"Child Of Our Time"、ピーター&ゴードンの"My First Day Alone"など佳曲が並んでいますが、一番の聞きものは、タートルズ、ママス&パパスがとりあげた"You Baby"ですね。僕はママス&パパスのベストでこの曲を知って最初に好きになった曲でした。元々はヴォーグスの為に書かれた曲だそうが、プロデューサーのボーンズ・ハウが嫌ってシングルにしなかったところ、タートルズが取り上げてヒットさせたという裏話があります。

*1:これは本国以上に日本で70'sにはいってから大ヒットしたナンバー。邦題は"孤独の世界"。余談ですが渡辺美奈代にそっくりな曲があります