Mr.#3

I THINK OF YOU-THE COMPLETE

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55■Mister Moonlight / The Merseybeats
イングランド北部の西海岸側に位置する港町、リヴァプールアメリカからのR&Bを船員が持ち込んだことから独自のロックンロールが発生した、というのは今では定説となっています。日本ではひっくるめて60'sのブリティッシュ・ビートをリヴァプールサウンドと呼んでいたそうですが、厳密にはマージー川の河口に位置するリヴァプールのバンドをマージー・ビートと呼びます(ですから同じマージー周辺のマンチェスターホリーズ、マインドベンダーズ、ハーマンズ・ハーミッツなどは、マージー・ビートとは違いますし、ましてやロンドンのR&B色の濃いバンド(ストーンズヤードバーズ、フー、キンクス)なんかはマージー・ビートでも何でもないのです。
さて、地域ごとのバンドの音は実はあまり大差なく(○○サウンドとか言われても)、要はロックンロール、R&B系か、もう少しポップなブリル・ビルディング・サウンド(())か、って所です。主にマージー・ビートというのは64年ごろまでにデビューしたリヴァプールのバンドを指す様ですが、ビートルズ、ジェリー&ザ・ペースメーカーズ、ビリー・J・クレイマー&ダコタス、フォーモスト、サーチャーズ、スウィンギン・ブルージーンズといった有名どころから、アンダーテイカーズ(ジャッキー・ロマックスがいた)、ハウィー・ケイシー&ザ・シニアーズ、フレディー・スター&ミッドナイターズ("Peter Gun Locomotion"をヒットさせた)、ビッグ・スリー、パディ、クラスス&ギブソンなどやや知名度が落ちるものまで、その数は数百と言われています。そのものずばりのマージービーツというネーミングの4人組は、レーベルがFontanaだった事から、日本でも知名度はやや落ちましたが、トニー・クレインの甘いvoをフィーチャーしたグループです。先ほどの分類では中間に位置して、ビートバンドというよりは、アメリカの作家のカヴァー中心の甘目な選曲が売りでした。63年のデビューシングルが"It's Love That Really Counts"で、これはシレルズがヒットさせたバカラック=デイヴィッド作(B面がストーンズもカヴァーした"The Fortune Teller")で#24まで上昇。続くのが#5まで上がった"I Think Of You"ですが、このB面がドクター・フィールグッドの"Mister Moonlight"でした。
日本ではビートルズがカヴァーしていること、来日した頃の特別番組に印象的に使われていた事から、ビートルズのオリジナルと思われている節もあります。ジョン・レノンのシャウトから始まるそっちのヴァージョンは「For Sale」に収録されています。マージービーツのヴァージョンは、適度な甘さ(クレインのリードだけでなくハーモニーにも感じられます)が魅力です。個人的にはやはりこちらかなあ。そういえば90'sに映画「満月」でプリンセス・プリンセスもカヴァーしていました。

4枚目のシングルが、ダスティ・スプリングフィールドがカヴァーしたバカラック曲の"Wishin' And Hopin'"でこれもいい感じです(#13)

この頃からbassは、ビリー・キンズレイからビッグ・スリーのジョニー・ガスタフソンが担当。この人は70'sに入ってもクォーターマス、ハード・スタッフ、ロキシー・ミュージック、イアン・ギラン・バンドで活躍する大ヴェテランです。
マージービーツはFontanaに1枚のLP「Merseybeats」を残して65年に解散しますが、クレインとキンズレイは、マージーズ(Merseys)としてデュオを組みます。66年にリリースした最初のシングル"Sorrow"は#4まで上がるヒットとなり、後にデイヴィッド・ボウイが「Pinups」でカヴァーした事で尚有名になりました。


こちらはボウイのヴァージョン。みてくれがグラムやねえ。