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ミニット・バイ・ミニット <SHM-CD>

ミニット・バイ・ミニット

97■You Never Change / The Doobie Brothers
80年のグラミー賞で数部門独占したのがドゥービー・ブラザーズの「Minute By Minute」です。僕は79年の来日公演に行くのが決まってたので、義務的に買った新作でしたが、豪快なアメリカン・ロックというよりは妙にこじんまりしてしまって(AOR風味なのですが、これがリリースされた時点でAOR(=Adult Oritented Rock)という言葉は、あまり聞かれませんでした)、あまり感心しませんでした。日本での評も、まあシティ・ミュージック化が加速したドゥービーといったいつものパターン(これが"China Grove"と同じバンドとはとても思えません〜という文章を何万人何十万人の人が感じたでしょう)といった感じですが、グラミーの結果が発表された80年(リリースが78年の暮れのアルバムに80年度のグラミーとはいかがなものか?)には、AORという言葉が日常的に音楽誌の間でも使われ、いかに浸透したかがわかります。だからSong Of The YearとRecord Of The Yearに"What A Fool Believes"が選ばれても、なんでそんな前の曲が、という印象を受けたのを覚えています。
さてよく言われるように、ドゥービーの音楽を変えたのはスティーリー・ダンからやってきたマイケル・マクドナルドだ、という事ですが、もちろんそうなんですけど、パット・シモンズの流されやすい触媒体質も影響しています。「Takin' It To The Street」あたりではシモンズ色とマクドナルド色が拮抗していい味を出していましたが、次の「Livin' On The Fault Line」ではシモンズはあっさり白旗を揚げ、従来のフォーク・ロックンロール色からソウル・ジャズ色を強めた音になっています。この「Minute By Minute」では、ブルーグラスな"Steamer Lane Breakdown"や二コレット・ラーソンと歌ったフォーキーな"Sweet Feelin'"で自己主張していますが、自らスティーリー・ダンっぽいarrに身を任せた"You Never Change"では、ソウルジャズ色濃い演奏を聞かせます。また後にロビー・デュプリーの"Steal Away"などに引用されたマクドナルドなリズム・パターンがここでも生きているのです。
79年2月の2度目の来日は、そういったスタジオ・アルバムでの動きとは別に、従来型の豪快なロックンロールショーで十分楽しめました。ただ帰国後、ジョン・ハートマン(ds)とジェフ・バクスター(g)の脱退が報じられるなど、あわただしかったことは確かです。