wind#3

In the Court of the Crimson King

In the Court of the Crimson King

187■I Talk To The Wind / King Crimson
初期クリムゾン(具体的にはファーストの「宮殿」の)の抒情性は、実はまやかしみたいなもので、そのメロディアスな上っ面を取り除けば、その下にはシヴィアな表情をした現実が待っている、みたいな事は、キング・クリムゾンの(というかプログレッシヴ・ロックの)抒情的なサイドを好む人たちに向けて、80's頃によく言われた話です。今ではジャンルの住み分けが確立してしまってそんな論争も起きようがないのですが…
"21st Century Schizoid Man"の激しいエンディングの後、一息つくようにイアン・マクドナルドのfluteのイントロから始まる"I Talk To The Wind"は、僕の知る全クリムゾンのレパートリーの中では、やはり一番好きです。どちらかと言うと抒情的なプログレは、限度を知らないというかとめどもなく抒情的になる傾向にあるので苦手ですが、さすが古典ともいえるクリムゾンは適度に抑えがあります。もともとはクリムゾン以前にロバート・フリップとマイケル&ピーター・ジャイルズが組んでいたジャイルズ、ジャイルズ、フリップにマクドナルドと元フェアポート・コンヴェンションのジュディ・ダイブルを加えたバンドのレパートリーで、このときのデモは、後に「新世代への啓示」という邦題がついたクリムゾンのコンピレーションに収録されました。
この曲に抒情性を持ちこんだのはグレッグ・レイクで、僕はEL&Pのもったいぶった音楽はどうも苦手なんですが、レイクの歌うフォーク趣味のナンバーは好きです。まるで機械が叩いているようなマイケル・ジャイルズの正確な、抑えに抑えたdsも素晴らしいですし、fluteとclarinetを駆使したイアン・マクドナルドの存在も大きいです。