■■遠いうねり/グイン・サーガ127:栗本薫(ハヤカワ文庫JA)

遠いうねり―グイン・サーガ〈127〉 (ハヤカワ文庫JA)

遠いうねり―グイン・サーガ〈127〉 (ハヤカワ文庫JA)

5月26日に膵臓ガンの為死去した栗本薫氏のライフワークとなった、グイン・サーガ・シリーズですが、僕は第3巻の「ノスフェラスの戦い」あたりから買っているので、かれこれ27年近い付き合いになります。シリーズが頃にはストレートなヒロイック・ファンタシーでしたが、その後大河ドラマのような展開となりながら、時には剣の色合いが、そしてある時には魔法の色合いが濃くなり、その匙加減が絶妙でした。日本におけるファンタジーというのは、あくまでも児童文学の世界で、大人が読むようなものではないという認識が一般的でしたし、現在のファンタジー・ブームを見ると隔世の感です。27年間熱心に追いかけていたわけではなく、10巻くらいためといて一気読みしたり、一時期は惰性に感じたりと思ったこともありました。栗本薫氏の全作品が好きではなく、「魔界水滸伝」と「グイン」だけのファンなわけで、いわゆる「やおい」やあとがきに見られる世界観やにはなじめないものもありました。それでもよくまあこれほど長い間引っ張ってくれたなあという感謝の気持ちでいっぱいです。長いシリーズが作者の死によって中断するという事態を身をもって経験したのは、今回が初めてです(池波正太郎の「梅安」を読むときいつも最後で、「これで終わりだっけ」と感じるのですが)。とりあえず128巻まではできているとの事。今後どうなるのかは神のみぞ知るですが、何年か前からあとがきで病魔に侵されていたということは明るいタッチで書かれていましたが、いみじくも作家の新井素子氏が書かれてた様に「小説の神様が「グイン」を終わるまで、生かしておいてくれる」と僕も信じていただけに、残念な気持ちはやはりあります。