#5イージー・ライダーのバラード

Ballad of Easy Rider

Ballad of Easy Rider

■Ballad Of Easy Rider:The Byrds
クラレンス・ホワイト(g)を配した後期バーズにおいては見逃される事が多い1枚ですが、これ大好きなんです。68年に「Sweetheart Of The Rodeo」でカントリー・ロックというそれまでのロックと反対勢力にあったカントリーを取りこんだ画期的な作品を出したバーズですが、その立役者のグラム・パーソンズはクリス・ヒルマンを連れ早々と脱退。マグインはパーソンズの遺した遺産を継承しつつ独自の路線を歩むことになります。69年にはマグイン(g,vo)、ホワイト(g,vo)、ジョン・ヨーク(b,vo)、ジーン・パーソンズ(ds,vo)のラインナップで「Dr.Byrds & Mr.Hyde」をリリースしています。前作の流れを組む音ですけど前作がルーツにリスペクトをささげたアコースティックなカントリー・ロックなのに対し、こちらはエレクトリックなカントリー・ロッキンという味わい。更に「Ballad Of Easy Rider」('69)では後期バーズの流れるようなカントリー・ロックのサウンドが完成した重要作です。この「流れるような」とは、ホワイトによるストリングス・ベンダーのイメージです。これは乱暴に言うとsteel-gのトーンをel-gで再現したシステムで、僕は「レココレ」のバーズ特集で紹介されるまでずっとsteelだと思ってたのでした。
さて69年の映画「イージー・ライダー」の主題歌をマグインが歌い、映画と共に評判になったことから、バーズでもこの曲を再演していますがこれがオープニング。ストリングスをバックに朗々と歌われますが、出来はマグインのソロヴァージョンの方が上です。


ヨークが歌う"Fido"はブルージーなカントリー・ロック。ジェントル・ソウルのパメラ・ポランドが書いた"Tulsa County"は、元々ジューン・カーターのヒットだったらしいです。ホワイトのベンダー・プレイが冴えます。ドゥービー・ブラザーズもカヴァーした"Jesus Is Just Alright"は、アート・レイノルズ・シンガーズのゴスペル風ナンバー。これはジーンが持ち込んだ味です。ジーン・クラークと共演した事もあるゴスディン兄弟の作品"There Must Be Someone"、そしてウディ・ガスリーの"Deportee"も美しいメロディーです。マグインが書いた曲は先のタイトル曲だけで、カヴァーも多く他のメンバーに割り振った曲もあって、マグイン主導型のワンマンバンドから民主主義的なバンドに変ってゆく傾向が見られます。スキップ・バッティンがヨークに変って参加する次の「(Untitled)」で後期バーズのサウンドは完成を見るのです。