#19他のシスコ勢1〜スティーヴ・ミラー

第7章は「浮上するサン・フランシスコ・サウンド」と題してJA、デッドに続いて各レコード会社がこぞって契約したシスコ・バンドが紹介されていますが、全然不足なので大幅に追加して紹介します。地元シスコ及び周辺のバンドから、シスコへやってきた各地のバンドまで、ひっくるめてシスコ・サウンドと紹介されている事が多いバンドをまとめて紹介します。
■Steve Miller Band
元々はテキサス出身で、東部でブルーズ・バンドをやった後シカゴで、バリー・ゴールドバーグとのゴールドバーグ・ミラー・ブルーズ・バンドで注目されたスティーヴ・ミラーをシスコ・サウンドで紹介するのは、ちょっと違うという意見もあるかもしれませんが、66年にシスコへ渡り、67年にCapitolと6万ドルで契約したスティーヴ・ミラー・バンドはシスコの街がなければこういう形で登場する事はなかった思います。
スティーヴ・ミラー・バンドは、prodに英国人のグリン・ジョンズを起用しシスコを離れロンドン録音という異例のデビュー作「Children Of The Future」を68年にリリース。ジョンズに手によるそのサウンドは、英国的な手触りを持った西海岸ロックで新鮮です。ミラー(g,vo)とボズ・スキャッグス(g,vo)という個性の違うvoによるナンバーは新鮮です。その路線を拡大したのが初期の名作「Sailor」です。
■Sailor:Steve Miller Band

セイラー(紙ジャケット仕様)

セイラー(紙ジャケット仕様)

この時期のメンバーはジム・ピーターマン(kb)、ロニー・ターナー(b)、テム・ディヴィス(ds)に先の2人の5人組で、68年のリリース。ジミー・リードのカヴァーもあり、芯はブルーズでありますが、ポップなメロディ、サイケデリックな意匠をまとっており他のシスコバンドとはずいぶん違うサウンドです。

まるでピンク・フロイドの様な"先祖の歌"

ロマンティックな"Quicksilver Girl"
初期のヒット曲"Living In The USA"でも印象的なorganを聞かせるピーターマンは、これだけのセンスがあるのに、ミラー・バンド以降消息がわかりません。

その後スキャッグスの脱退、ベン・シドラン(kb)の加入もあり、メンバーチェンジを重ねるごとにサウンドはわかりやすくなっていきます。初期の音は手っ取り早く「Anthology」がお勧め。
73年の「The Joker」以後しばらくは、ヒットチャートを席巻したポップなメロディのアメリカン・バンドな印象ですけど、根っこのところはブルーズというスタイルは変わらず。ただしヒットパレードな選曲のライヴ盤ではなかなか伝わりません。