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オン・ザ・ボーダー

オン・ザ・ボーダー

■On The Border / The Eagles
イーグルスの3枚目「On The Border」('74)は一般的には過度期の作品として、あまり評価はされていませんが、熱心なファンの間では評判の1枚です。

「真のウエスト・コースト魂。それはヒューマンな感性を支えるプログレッシヴ。
バーズ→ジェファーソン→CSN&Yと築かれてきた真髄。新メンバーを加え、超強力になったスーパーグループ”イーグルス”が、絶対の自信を持って贈る傑作3段目!」

これは当時の日本盤LPの帯の文句。なんだかよくわからないけど、ワーナー・パイオニア洋楽部(この頃はよかったのです、まだ)の熱さ、勢いのよさが伝わってきます。それまで東芝音工配給だった、Asylumが、ワーナー・パイオニアに移っての第1作で、過去の2枚同様、グリン・ジョンズのプロデュース、ロンドンのオリンピック・スタジオ録音でスタートしましたが、まもなく両者は決裂しまして、2曲を除いて、LAのレコード・プラントでビル・シムジクのプロデュースでレコーディングされました。5人目のメンバーとしてフロウというバンドにいた*1ドン・フェルダー(g)が参加していますが、"Already Gone"と"Good Day In Hell"の2曲でgを弾いているのみで、残りには未参加です。印象的なジャケットのイラスト(映画「ファウル・プレイ」でゴールディ・ホーンがこのジャケのTシャツを着ていました)は、ベッティアン・ヤズによるものです。

アコースティックなカントリー・ロック一辺倒から、ソリッドなロックンロールもこなすバンドへの転身には、フェルダーの参加が大きく関わっています。とはいっても今回2曲だけの参加ですが、"Already Gone"でののびやかなロックンロール、"Good Day In Hell"の泥くさいルーズなブギなど、それまでのイーグルスがやや弱かった部分が補強されている気もします。フェルダーの参加がバーニー・レドンに与えたプレッシャーは大きかった、というのはのちのインタヴューでグレン・フライが語っていたことですが、それはまた次作以降の話でしょう。レドンがそのキャリアを雄弁に語ったカントリー・ロックな"My Man"*2の素晴らしさは、忘れられません。そのレドンがbanjoを弾く軽快な"Midnight Flyer"は、今までの2曲のvoから今回1曲に減らされてしまった、ランディー・マイズナーが歌うカントリー・ロック。軽快なコーラスが印象的ですが、セルダム・シーン周辺のssw、ポール・クラフトのカヴァーです。長い間クラフトという人は謎の人物だったのですが、90'sに入ってナッシュヴィルのカントリー・シーンで注目され、ようやくCDがでました(この曲は「Brother Jukebox」('90)に収録)。リンダ・ロンシュタットが「Heart Like A Wheel」で歌った"Keep Me From Blowing Away"*3の作者でもあります。
さてタイトル曲ながら当時のライヴのレパートリーからも外れていた"On The Border"は、ハードエッジなロックンロールで、ソリッドな演奏とヘヴィなコーラスは、後の"Heartache Tonight"あたりの伏線にも思えます。ソウル・ミュージックへの傾倒は、コーラスにも見て取れますね。後半の歌いまわしは、ランディ・マイズナー、バーニー・レドン、グレン・フライドン・ヘンリーの順番です。



同じ頃の映像というと最初のカリフォルニア・ジャムでしょう。

*1:CTIから出た「Flow」は日本のヴィヴィッドからCD化されています

*2:グラム・パーソンズに捧げられています

*3:エリック・カズ作の"Blowing Away"とは別曲