ボズ・スキャッグス

SILK DEGREES

SILK DEGREES

■Silk Degrees Expanded:Boz ScaggsSony Music Direct:MHCP1291-J)
ボズ・スキャッグスという人は、元スティーヴ・ミラー・バンドにいた人でありながら、80'sのAORブームに乗っかって日本では売れに売れた人なので、AORを敵視するルーツ・ロック・ファンからは複雑な重いで見られてる、みたいな話を聞いた事があります。確かに80'sはじめのスキャッグスのもてはやされぶりはイジョーとも言えましたし、バック・バンドがTOTOに移行したという話題もありました。実は80'sは「Middle Man」くらいしかオリジナルLPはなく、たまに出るベスト盤(CBSソニーが得意としたジャケ代えの選曲は代り映えしない物)とシングルでつないでたのに、あの人気ですもの。ブレイクのきっかけとなったのは76年の「Silk Degrees」ですが、このアルバムのすごさに本当に気付いたのは実は最近の事で、ブルー・アイド・ソウルと当時から言われてましたが、それはスキャッグスのvoだけに限らなかったのです。冒頭の"What Can I Say"や"Lowdown"のソウルっぽい16ビートのarrは、このLPを初めて聞いた70's後半の高校生時代にはピンとこなかったですし、レス・デューデックの熱いスライドが冴えわたるブギの"Jump Street"にもきっと感じなかったんだろうなあ。"We're All Alone"(この曲が観客から自発的に歌いだされた83年頃のSuntory Old Hot Liveは衝撃的でした。日本の観客もここまで成熟したのか…と)、"Harbour Lights"といったバラードが日本では注目され、大人のロックとして認知されていったのですが、そういう泣きもの以外にもこのアルバムは大いに魅力があり、今の耳では先の16ビートのソウル〜ファンクっぽいものもなかなかカッコイイ。"Lido Shuffle"は、タイトル通りシャッフルビートの心地いいもの。やまがたすみこにも引用された"Love Me Tomorrow"もニヤリと笑えます。ボーナスは76年のライヴ3曲。とりわけドニー・デイカスのスライドをフィーチャーした"Jump Street"がカッコいい。