⑫■ミツバチのささやき('73スペイン)

監督:ビクトル・エリセ



日本公開は確か85年。今はなきシネヴィヴァン六本木で見て、名古屋シルバー(ゴールドだったかな)で見て、新潟シネウィンドで見た。ヴィデオ・デッキを持たなかった当時、何度でも見たい場合は足しげく通うしかなかったのだ。いわゆるアート系の作品ながら、いろんな場所でこれだけ見れたということは、結構なロングランだったのでしょう。そういう意味では「ストレンジャー・ザン・パラダイス」何かと並んで、80'sの映画的記憶になっています。
寡作で知られるエリセ監督の長編デビュー作。40年ごろの内戦後のスペインの田舎を舞台とした話。映画「フランケンシュタイン」をモチーフにした、現実と空想を狭間を行き来する少女(と呼ぶには幼すぎる)をアナ・トレントが好演(彼女はこの後「カラスの飼育」「エル・ニド」などに出演してます。数少ない作品が公開されたのはやはり「ミツバチ」効果か)詩情あふれる音楽、抑制の聞いた演出、荒涼とした風景、どれも素晴らしいです。久しぶりに見直して実感したのは、線路に耳をつけるシーン、燃え上がる焚き火で遊ぶ子供たち、丘の上から村はずれの廃屋を臨むシーンなど、本筋とは直接関係ないものばかり。これだけの作品なれどDVDが廃盤(しかも日本盤はかなり粗悪な内容だったという)とはいかに。でももうすぐブルーレイ化されるといいます。