幽霊屋敷:ブルワー・リットン
- 作者: アルジャーノン・ブラックウッド,ブルワー・リットン,ヘンリー・ジェイムズ,M・R・ジェイムズ,W・W・ジェイコブズ,アーサー・マッケン,E・F・ベンスン,W・F・ハーヴィー,J・S・レ・ファニュ,平井呈一
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/01/31
- メディア: 文庫
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後半はほとんど余分だけど、途中までは結構いい感じ。
創元推理文庫の『怪奇小説傑作集』第一巻の一番最初に載ってる作品。発表は1857年、日本では幕末(ハリスが下田に来航した翌年)で、結構古い。翻訳も一人称に「余」を用いるなど古めかしい雰囲気だ。当時心霊主義ブームが盛り上がりつつあったイギリスでは、こういったゴーストストーリーがどんどん発表されていたらしい。
個人的になじみ深いこの作品、内容は前半と後半にくっきり分かれていて雰囲気も全然違ってる。前半は実地調査、後半はそれに関する難解な解説って感じ。巻末の解説によると小泉八雲は、この作品を英語で書かれた最も怖い傑作と激賞していたという。悠々自適に暮してる主人公が、下男と愛犬を引き連れて噂の幽霊屋敷に突撃、散々な目に合うのが前半。この舞台となった建物は実在のもので、当時幽霊屋敷として有名だったらしい。ノリは完全に心霊スポット巡りだが、これがかなり怖い。とくに下男がダッシュで逃げ出すまでの妖しい雰囲気は抜群。緊張感もすごい。劇中では描写されないが、散々頼りになる奴って持ちあげられてた下男が逃げ出したくらいだから、よっぽど凄まじい出来事があったに違いない、なんて思う。上手い。幽霊は色々な姿のものが、ネタ見せのように入れ替わり立ち替わり現われる。興味深いけど幽霊自体の怖さはそこそこ。
後半は幽霊屋敷の地下に、オカルトアイテム満載の隠し部屋があることが発覚する。屋敷に発生した妖しい出来事のすべての原因がその部屋にあるらしい。そして主人公と、時を越えて生きながらえてきた部屋の主との間で、後半をほとんどまるまる使ったオカルト問答が展開される。これはじめて読んだのは中学のときだったのだが、何度この後半で挫折したことか。日本語で書かれてるのに、さっぱり意味がわからなかった。そんなに長い作品でもないのに。
なんでも著者はオカルトまっしぐらな人で、フランス出身の隠秘学思想家エリファス・レヴィ(「近代オカルティズムの父」なんて呼ばれている)と親交を持ち、薔薇十字団(オカルト秘密結社)に所属してたともいわれている。ガチな人だったのだ。この後半の問答もそういった隠秘学思想の強い影響下で書かれていて、単に怖いの読みたいだけの中学生にはちょっとハードルが高過ぎたようだ。まぁ、今でもあんまり変わってない気もするけど。