17002■■天城越え('83日本)

監督:三村晴彦
出演:渡瀬恒彦、田中裕子、平幹二朗

<あの頃映画> 天城越え [DVD]

<あの頃映画> 天城越え [DVD]

石川さゆりの歌とは関係ない、松本清張の同名作品の映画化。松竹での松本作品といえば野村芳太郎監督(製作にその名も)ですが、脚本を手掛けた三村晴彦が初監督。妖艶な田中裕子演じる娼婦が圧倒的な演技力で見せた1本でした。少年、老刑事それぞれの視点から見た下田から修善寺へ向かう天城の峠で起きた事件を描いたサスペンス。ただしあそこまで高評価はどうかなあ?と思う部分(音楽とか)もあります。若き柄本明がりりしい。他には吉行和子小倉一郎伊藤洋一坂上二郎、金子研三ら。現在主流の紙マスクに比べて覆う面積のちっさいこと。あとラスト手術中落としたお守りを足で向こうにやる加藤剛の主治医は、冒頭のレントゲン読影ミスなんじゃないの?
クレジット後にトンネルに消えるバイクの群れに余韻を消すという批判ありますが、僕はありだと思います。

静岡で印刷屋を営む小野寺のもとに、田島と名乗る老人が、県警の嘱託で「天城山殺人事件」という刑事調書の印刷を依頼しに来た。原稿を見て激しく衝撃を受けた小野寺は十四歳の頃を思い浮かべる。小野寺は十四歳のとき、母の情事を目撃し、それまで彼にとって、神であり恋人であり、亡き父を裏切った母が許せず、静岡にいる兄を訪ねて一人で天城越えの旅に出た。少年は素足で旅する若い娘ハナと出会い、並んで歩いた。少年は美しいハナに母の面影を感じる。ところが、道中、ハナは一人の土工に出会うと、無理矢理に少年と別れ、男と歩きだした。気になった少年が後を追うと、草むらの中で情交を重ねる二人を目撃する。その土工が殺された。ハナが容疑者として逮捕される。土工と歩いているところを目撃した者もおり、彼女は土工から貰ったと思われる金も持っていた。さらに、現場には九文半ほどの足跡があり、ハナの足も九文半だった。警察の取調べに対し、ハナは土工と関係して金を貰ったことは認めたが、殺しは否認した。売春宿の女だったハナは一文なしで逃げだし、金が必要だった。結局、ハナは証拠不十分で釈放された。彼女は真犯人を知っている様子だか、頑として口を割らず、事件は迷宮入りとなった。田島老人はそのときの刑事だった。「九文半の足跡を女のものだと断定したのが失敗でした。犯人は子供でした」と老人は語る。そして、犯人である子供の動機が分らないと続ける。犯人は、少年=小野寺であった。少年はハナと土工の情交を見て、母が犯されている……そんな思いが浮かんだ。ハナにも、少年と天城を肩を並べて歩いているうちに、彼の純粋な気持ちが伝わったのだろう。だから、目撃した事実を口にしなかったのだ。刑事だった老人は、三十年ぶりで小野寺が真犯人であるという推理に達し、印刷を依頼に来たのだ。しかし、もう時効であった。