【読書歴】6・創元の帆船マークと言えばこれ

怪奇小説傑作集1(創元推理文庫)

海外ファンタジーも好きでしたが、オーソドックスな怪談、怪奇小説も好きでした。創元推理文庫の全5巻のこの種の古典を集めた文庫は現在も版を重ねているベストセラーです。第1巻に入ったW.F.ハーヴェイの"炎天”という短編の奇妙な味わいがすごく好きなんです。どんな話かと言うと

190X年8月20日、暑い夏の午後の話。絵描きのジェイムズ・ウィゼンクロフトは、自宅の部屋で思いつくまま空想で、ある男の絵を描いた。その見事な出来ばえに満足した彼は、その絵を丸めてポケットに入れ、当てもなく散歩に出かけた。あまりの暑さのため記憶が朦朧としながら、夜ふと気がつくと、ある石彫り屋の前にいたが、その主人の姿はまさに先ほど彼が描いた男だった。石彫り屋の主人は、墓石に名入れをしている最中で、石には「ジェイムズ・ウィゼンクロフト(1860.1.6〜190X.8.20)」と刻まれていた。

うまくまとめられないけど、この導入部分でドキドキしない人はいないでしょう。どんな話に膨らんでゆくのか、という期待も大きいのですが… 作者はオチをつけないまま、

この日のまま家へ帰ると悪い事が起きる気がすると、石彫り屋は絵描きを自宅に引きとめ、酒を出し日付が変わるまで待つように促す。この短編は、絵描きのメモ形式になっており、石彫り屋が蚤を鑢でといでるシーンで唐突に終わる。絵描きをどうなったのだろうか、何事もないまま、翌朝を迎えられたのか?、石彫り屋の鋭利な蚤で殺されてしまったのか?それとも・・・

画像は手持ちの表紙で、現行のものとは違います。