do it#3

Can't Buy a Thrill
■Do It Again / Steely Dan
思えばスティーリー・ダンは相当に奇妙なグループだ。中心となっているのはドナルド・フェイゲン(kb,vo)とウォルター・ベッカー(b,sax)だが、ちゃんとバンドの形態をとっていたのは2枚目の「Countdown To Ecstasy」あたりまでで、以降はセッション・ミュージシャンを適材適所に起用したスタイルをとっている。一般的に評価が高いのはAORシーンに君臨した「Aja」以降だけど、僕は大ヒットした「Aja」のよさが全くわからない人なんで、それ以降は興味なし。となると「Royal Scam」とか「Ecstasy」かな。デビュー作「Can't Buy A Thrill」('72)はまた別の意味でスティーリー・ダンらしくない。この時点でのメンバーは、先の2人に、ジェフ・バクスター(g)、ジム・ホッダー(ds)、デイヴィッド・パーマー(vo〜元ミドル・クラス)、デニー・ダイアス(g)。イアン・マシューズやローレン・ウッドもカヴァーした"Dirty Work"などカントリー・ロック的な味わいの曲もあるが、引きつける様なエリオット・ランドール(ランドールズ・アイランド)のgをフィーチャーした"Reeling In The Years"とダイアスのel-sitarのソロが続く"Do It Again"は同じバンドがやってるとは思えない。特に後者は「ラテンっぽいリズムに乗せて西部のガンマンの寓話を歌った」(五十嵐正さん)ヘンな曲ながらヒット。83年にはクラブ・ハウスというハウスの先駆者的アーティストが"Do It Again Medley With Billie Jean"としてマイケル・ジャクソンの"Billie Jean"とこの曲をサンプリングさせて(とはちょっと違うか)ヒットさせている。そちらは邦題が"不思議なビリー・ジーン"。

■■■おかしなおかしな大追跡('72米)

おかしなおかしな大追跡 特別版 [DVD]
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
主演:バーブラ・ストライザンドライアン・オニール、マデリーン・カーン
30年代のスクリューボール・コメディーを現代(70's)によみがえらせた、ボグダノヴィッチの傑作。バーブラ・ストライザンドという人に魅力を感じたことは一度もないけど、ここではその役柄を含めてかなり痛快。畳み掛けるような台詞の応酬はホークスの「赤ちゃん教育」あたりからの影響もある、とレーナード・マルティンは書いている。圧巻は後半のカー・チェイス・シーンで「ブリット」のパロディーなんだろうが、坂道の多いシスコの街を効果的に使ったロケが素晴らしい。シリアスなカー・チェイスは数多いが、笑えるカー・チェイスではこれが一番か(「ファール・プレイ」に与えた影響も大きい)。他にはオースティン・ペンデルトン、ソレル・ブック、マイケル・マーフィーら。同じ柄の鞄が複数出てきて、それの取り合いになるという古典的な手法だが、今でも十分笑える。とりわけ奇妙な髪型のマデリーン・カーンはこれがデビュー作となる。
What's Up,Doc?、Warner Bros、1h34