09002■If The World Was You:J D Souther('08)

イフ・ザ・ワールド・ワズ・ユー

イフ・ザ・ワールド・ワズ・ユー

24年ぶりのソロが昨年リリースされたJD・サウザーですが、これが完全なジャズ・アルバムで聞くものを戸惑わせます。ネット上で紹介された熱心な(そして筋金入りの)ファンの方々も「これが20数年ぶりのアルバムでやることかいと突っ込みを入れたくなりますが」とか「よくよく聴いていると(中略)いかにもこの人らしい、フォークやカントリーを根っこに持ったSSWの曲が詰まったアルバム」とか「ジャズを身にまとった辛口の大人の歌の数々ですが、サウザーに合っているかは別です」と、かなり苦しい胸の内を語っていらっしゃいますが(2番目のはマッキさんのブログから引用させていただきました)、僕としてはまあ、多分聞くことなく放出されてゆくだろうなあ…という感触を得ました。これまでのサウザーのキャリアを振り返ってみますと、
72年に新興のAsylumからsswとしてデビューし、イーグルスの「友人」として曲作りに参加する一方、リンダ・ロンシュタットと浮き名を流し、作られた「スーパー・グループ」SHFバンド参加後、2枚目のソロを出したのが76年。CBSに移って79年に出した「You're Only Lonely」がCBSソニーAORキャンペーンに乗って日本で大ヒットすると同時に、ロイ・オービソン的な甘いロッカバラードのタイトル曲がアメリカでもヒットします。その後84年にWarner Brosから4枚目のソロを出して沈黙に入りますが、ライヴに関しては、77年のローリング・ココナッツ・レヴューに始まり、すでにふた桁の来日公演があります。ギター1本で来れる気やすさ、日本でも根強い人気(関西方面のサーファーなどウエストコースト愛好者の人気に加え、「ファッショナブルなAORシンガー」としての人気が加わりました)を誇り、広島ピース・コンサート、泉谷しげるとの共演、カーラ・ボノフとの共演などイヴェントにも参加しました。
You're Only Lonely

You're Only Lonely

(去年出た欧で出たコンピです。割と真っ当な選曲にびっくり)
BORDER TOWN - THE VERY BEST OF J.D. SOUTHER (IMPORT)

BORDER TOWN - THE VERY BEST OF J.D. SOUTHER (IMPORT)

で、この新作「If The World Was You」ですが、すでに触れているようにスタイルとしてはジャズですね。ジャズに全く素養がない僕ですので、ジャズだから聴かないと思われるかもしれませんが、それまでのサウザーの作品にあったメロディアスな部分が、すっかり抜けてしまっていて、魅力を見つけにくいです。"I'll Be Here At Closing Time"では、かすかにそれまでのssw的作品の残り香を感じることができるのですが…
話題となっている"Brown(Osaka Story)"は、「おおきにMr.JD」という歌詞があったりしますが、その程度の興味です。ニュー・オーリンズ風のナンバーもありますが、あくまでもジャズ。こう言うのを買ったのはジョン・サイモンの「Journey」以来です(パイオニアLDC時代のサイモンの作品はジャズっぽいけどジャズではありませんでした)。
ジャケットの髭のないサウザーの姿にもちょっとびっくり。スピルバーグ監督の「オールウェイズ」(オードリー・ヘップバーンの遺作になりました)にクラブ歌手として出ていたことを思い出しました。
Slow Curve:SC001-US