■■喪服のランデヴー:コーネル・ウールリッチ

喪服のランデヴー (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 1-1)

喪服のランデヴー (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 1-1)

トリュフォーが監督した「黒衣の花嫁」はウールリッチの初長編('40)だったそうです。結婚式で誤って撃たれた新郎への復讐を誓った新婦の物語です。いわゆる本格ものであれば犯人を伏せ、一見関連のない人々の連続殺人から話を始めるのですが、いわゆるサスペンスのジャンルでは、誰がやったかではなく、どうやってやるを主に語ります。
「喪服のランデヴー」(10年くらい前にNHKでドラマ化されたという事です、ちなみに「黒衣」も大昔十朱幸代主演でドラマになっていて文庫の表紙にこのスチールが使われてて幻滅した覚えがありました)も似た話で、もうネタばれさせてしまいますが、飛行機の窓から投げた酒ビンに当たって死んだ女性の恋人の復讐譚です。すでに長編作家としても名声を得ていた時期('48)の作品で、焼き直しというよりは同じテーマでもう一度やってみたかった的な内容。黒シリーズといわれるダークなノワール(というのはこういう小説の事を指しますが、元となっているのはフランスの暗黒小説(セリ・ノワール)です)にふさわしい内容です。
但し時代的にずいぶん風化してしまっている描写もあって、そこを楽しめるかどうか?というのが読者のポイントです。それでもテンポよく美しい文体です。