12056■■■アニー・ホール('77米)

監督:ウディ・アレン
主演:ウディ・アレンダイアン・キートン、トニー・ロバーツ

この年のアカデミー4部門独占(作品、監督、脚本をアレン、主演女優をキートン)だった、ウディ・アレンの代表作。それまでどちらかというとスラプスティックな笑いだった、アレンの喜劇が、変わってきたことを感じる。
主人公のアルヴィー・シンガーは、NYから離れられないスタンダップ・コメディアン(漫談家、と言う字幕は古いか?)で、自身を投影した私小説に近い内容。シネマ・ヴァリテといわれるドキュメンタリータッチ(俳優が、カメラ(つまり観客)に向かって語りかける等)が、当時高校生の僕*1には、さっぱりわからなかったが、後になってずいぶんはまった1本。詭弁と屁理屈にまみれたアレンの台詞を、退屈ととるか、面白いととるかで映画の評価は分かれる。ダイアン・キートンとは、すでに私生活上のパートナーだったが、ここでは、お祖父さんの服を借りたようなファッション(ヴェストとネクタイと帽子)が、印象的で、アニー・ルックとして人気を得たらしい(そもそもキートンがいなくては高校生は見に行こうと思わなかったろう)。
NYの風景を取り入れた(ブルックリン橋のシーンがいい、高架線の下の道路をフルスピードで、飛ばすシーンは、「フレンチ・コネクション」のパロディみたいだ)ジョーク(小話)で、始まってジョークで終わる構成は、以後の都市型アレン映画の基本となった感じ。例によって俳優陣がいい。キートンをさらってしまうLAの音楽家に、ポール・サイモン(その取り巻きに、ローリー・バード(サイモンの相方ガーファンクルのGFであり、79年に自殺してしまう彼女のこれが、遺作となった。近年DVD化された「断絶」にも出演)とジェフ・ゴールドブラム)、アレンの最初の妻に大きな眼が魅力的なキャロル・ケイン*2、二番目の妻が、ジャネット・マーゴリン、ローリング・ストーン誌の記者に、シェリー・デュヴォール(ディランのコンサートでの”Just Like A Woman”は興ざめと語る)、アニーの弟に、若きクリストファー・ウォーケン(深夜対向車のライトを見ると突っ込んで行きたくなるとアレンに告白、その後ウォーケンが2人を車で送るシーンがある)。ナルコレプシーのことを知ったのもこの映画だった。
一番好きな台詞は、映画に遅刻したキートンに向かってアレンが言う
「遅いな、パナマ運河経由か」

Annie Hall、United Artists、1h32、

*1:アカデミー賞を取った事を知って一人で見に行った。おそらく誘っても誰も来なかったろう

*2:小椋冬美の書く少女マンガの主人公みたい、この人を最初に意識したのは「さらば冬のかもめ」の娼婦役