★★AMERICAN BEAUTYーGrateful Dead ('70)

American Beauty

American Beauty

ずっと1970年のLAの話ばかりしてしてますが、少し北にあるシスコはどうだったのかという話。
サン・フランシスコが、フラワー・ムーヴメントと共に大いに脚光を浴びたのは67~68年頃です。サマー・オブ・ラヴといわれた67年夏のヒッピー達を中心とした連帯的な盛り上がりは、69年12月のシスコ郊外のオルタモントの悲劇といわれたストーンズのフリー・コンサート(黒人観客が会場警備のヘルズ・エンジェルズに殺害されたという事件)をきっかけに、急速にしぼみ、すべては幻想だったと自覚してゆくのです。

69年に「Volunteers」という大傑作を出したジェファーソン・エアプレインはこの年(70年)には、アルバムを出していません。一方シスコロックのもう一つの雄、グレイトフル・デッドは「Workingman's Dead」、「American Beauty」という2枚を短期間のうちにリリースしています。

69年の2枚組の「Live/Dead」でサイケデリックなステージをドキュメント化したデッドは、交流のあったCS&Nに影響されたハーモニーを生かした”Uncle John's Band”を録音。これを含む「Workingman」は、それまでのデッドよりも聞きやすいと評判でした。デッド流カントリー・ロックへのチャレンジはさらに続き「American」では、かなりユルサを感じさせる1枚で、昔は通して聞いてられなかったのですが、久々に聞くと結構ハマります。ジェリー・ガルシアが当時ニュー・ライダーズ・オブ・パープル・セージという趣味バンドを始めていたこともあって、カントリー・ロックの要素が前作よりも色濃いです。もちろんここでの音は学究的なカントリー・ロックではなく、仲間でわいわい的なものです。デッドの中ではロックンロール的な曲を書くことが多いボブ・ウィアが”Sugar Magnolia”、”Truckin'”という2大名曲をものにしているのはすごい。

原盤 Warner Brothers:WS1893 70年11月リリース。