キャント・バイ・ア・スリル

WC68★★★CAN'T BUY A THRILL−Steely Dan ('72)

Can't Buy A Thrill

Can't Buy A Thrill

NYでソングライターとして売れない日々を送っていたウォルター・ベッカードナルド・フェイゲンが、旧知のprod'er、ゲイリー・カッツによってLAに呼び寄せられ結成されたスティーリー・ダンは、カリフォルニア独特の音ではなく、カリフォルニアへやってきたよそ者がカリフォルニアで作り上げた音です。ジェフ・バクスター(g)、ジム・ホッダー(ds)、ダニー・デイアス(g)をNYから呼び寄せレコーディングを開始。フェイゲンがフロントに立つのをためらっていた為ミドル・クラスのデイヴィッド・パーマー(vo)を加えリリースしたのがこの「Can't Buy A Thrill」です。街角に立つ娼婦たちと欲望をイメージしたイラストのジャケットからして、さわやか系ではありません。バンド内に2人のgがいながら、ランドールズ・アイランドのエリオット・ランドール(g)にソロを取らせる(”Reeling In The Years”のヒリヒリするようなソロ)など後のようなバンドであってバンドでないスタイルが早くもちらりと出ています。ヒット曲”Do It Again”はラテンのリズムでel-sitarがソロを取る奇妙な曲ですが、何故か耳に残ります。パーマーは結局”Dirty Work”(イアン・マシューズのカヴァーが素晴らしかった)と”Brooklyn”の2曲でしかリードvoは取ってないのですけどどちらも牧歌的なムードで、後者は緩やかなカントリーロック。この辺は西海岸らしいのですけどホッダーが歌う”Midnight Cruiser”や”Fire In The Hole”の割り切れない感じがこのバンド独特なもので、ジャズ的な香りが漂います。
原盤 ABC:ABCX758   72年10月リリース