監督:小津安二郎
出演:中村鴈治郎、京マチ子、川口浩、杉村春子、若尾文子
「
彼岸花」(松竹)で
大映の
山本富士子を借りて撮った見返りに、小津が
大映で撮った、唯一の作品。戦前の「浮草物語」のリメイクで、リメイク版もその当時にあわせている。舞台は
蒲郡あたりか、夏の日差しがまぶしい頃の旅一座の話。題材の古臭さから、最初見るときはなんとなく後回しにしていたけど、もはや円熟のきわみ、といった感じで、思い出すと再見している。土砂降りの中、道を挟んで軒下で罵りあう
中村鴈治郎と
京マチ子はすごい。松竹からのおなじみの俳優陣もいるが、主演クラスは、他社の人なのでなんか新鮮。冒頭で、
灯台とビール瓶を同じフレームに撮るセンスに脱帽。他には、
野添ひとみ、
笠智衆、三井弘次、
桜むつ子ら。とりわけ、一座の金持ってどろんする(死語)三井の存在感(べらんめえ口調)がいい。