ハンブル・パイ後のマリオット

解散間際のバンドにいい話はありません。メンバー間のエゴ、音楽性の違いによる対立、ギャラの問題など。スティーヴ・マリオットを中心としたハンブル・パイもその例に漏れる事はありませんでした。マリオットと他のメンバーの間の溝は深く、それは音楽性の違いだけではなく、マリオット&ヒズ・バンドの形が作られてゆくなか他のメンバーのストレスもあったのでしょう。「Thunder Box」の頃には既にバラバラで、クレムソンは、コージー・パウエルらとのストレンジ・ブリュー(結局計画だけ?)を、マリオットはスクラバーズ(Scrubbers)と名乗るユニットで、カヴァー曲を中心としたセッションを行っていました。ラストアルバム「Street Rats」のビートルズ・カヴァー3曲の流れはこの辺から来ているのでしょう。実際スクラバーズの音源は。いかにもデモテープ的なものから、パイのグレッグ・リドレーのvoが入ったファンキーなものまで結構な五目味です。セッションにはボズ=イアン・ウォーレス、メル・コリンズの元クリムゾン組、ティム・ヒンクレー(kb)、クレムソン、リドレーのパイ組、B.J.コール(steel)らが参加。パイ解散後のマリオット&オールスターズもこれにミッキー・フィン(元ヘヴィ・メタル・キッズ)を加えたメンバーで、ソロ「Marriott」のA面を飾ります。この初ソロはA&Mとの契約をこなす為にリリースされたもので、レーベルの意向に合わずB面は米ミュージシャンをバックに録り直しになっています(それがまた売れ線とコアなファンの不評を買いました)。スクラバーズの音源は独Repertoireから出た「Scrubbers」('96)、マリオット&オール・スターズの「Clear Through The Night」('99)、パイ名義の「Running With The Pack」('99)、「Rainy Changes」('05)、「Wham Bam」('07)、「Lend Us A Quid」('10)など多数。どれもダブりありで相当な好きものでない限り勧められません。