#6 「Eagles」

Eagles (Asylum:SD-5054-US)

(帯付き)
イーグルス・ファースト

イーグルス・ファースト

LondonのOlympic Studioで録音された記念すべきデビュー作。
prodは、Glyn Johns(グリン・ジョーンズと記されてる事が多いが、明らかに初歩的誤植だ)。最高位#22。'72,6,12リリース。

A-1)Take It Easy(Jackson Browne/Glenn Frey)

アルバムより1ヶ月早く出たデビューシングル。最高位#12。
共作だが、99パーセントBrowneの作品(Freyは、"It's a girl,my lord,in a flat ford〜"のくだりを書いただけ、という)。「気楽に行こうぜ」というタイトルが、時代のムードと合った事もあり、あたかも「レイドバック」の様に、あの時代を代表するような、キャッチフレーズとして、今も使われる。リードはFreyだが、Meisnerがコーラスに大きく貢献している(2番はリードに)。
Leadonは、banjoを弾く。 " おいで、ベイビー、メイビーなんて言わないで "って所で、韻を踏んだ歌詞の楽しさを知った覚えがある。
Browneのヴァージョンは、2枚目「For Evryman」に収録。そこでのカントリー・ロック色濃い、アレンジ(Sneaky Peteのsteelを大きくフィーチャー)も捨てがたい。おそらく、イーグルスのステージでは、皆勤曲だろう。初期には、"My daddy was handsome devil 〜 "で、始まる一節が付いており(ここはアカペラで歌われる)、アコースティックなアレンジだった。
Leadon脱退後は、後半のbanjo部分は、Joe Walshのソロに取って代わられるが、76年頃のステージでのソロは、実に素晴らしい

A-2)Witchy Woman(Don Henley / Bernie Leadon)

現在ではEaglesの顔となっているHenleyのリード曲が、1枚目では2つしかないというあたりに、この時代の力関係が見えて面白い。昔も今もEaglesらしくない印象は変わらない、重い(ハードロック)曲。
2枚目のシングルで、最高位#9。タイトルからLinda Ronstadtの事を歌ったと、まことしやかに言われているが、真偽の程は不明。途中コーラスとdsが奇妙なマイナーキーとなるあたりは、「幌馬車が下方を通っている山の背に、インディアンが馬に乗って駆け上がるような音楽」とHenleyは語っている。
歌詞には、Zelda Fitzgerald(「華麗なるギャツビー」で知られる作家、Scott Fitzgerald夫人で、精神を病んで焼身自殺を図った)の生涯を書いた本からの影響もある とか。初期のステージでは、ジャム風のイントロが加えられた。ヒット曲でありながら、早いうちにステージのレパートリーから消えた。邦題「魔女のささやき」。
A-3)Chug All Night(Frey)

ストレートなロックンロールで、初期にはこういったナンバーも得意としていた。パーティで騒ごうぜ、的なシンプルなものだが、FreyとLeadonの2本のgが、なかなかカッコいい。リードはFrey。「chug」とはバイクの排気音の意味。76年頃までステージのレパートリーだったが、その後消える。ステージでは、イントロに入るまでのリズム・カッティングが、カッコいい。

A-4)Most Of Us Are Sad(GF)

昔はFreyの声とは思えないなあ、と不思議だったが、リードはMeisner。Glyn Johnsのprodの特色に、エコーをかけた、「霧のかかったような音」というのがあるが、その典型がこの曲。美しいハーモニーにマッチした名演。知る限りでは、一度もステージ演奏されてない。邦題「哀しみの我等」

A-5)Nightingale(Jackson Browne

Jackson Browneの未発表曲。いわゆるニーナ・デモの曲でもなく、かねてから交流があった、
(Freyとデュオを組んでいたJohn David Souther、そしてBrowneは同じアパートで、共同生活をしていた)Browneが彼らに贈ったとも考えられる。リードはHenleyだが、あまり印象に残らない。
これもステージでは演奏されてないようだ。邦題は「ナイチンゲールの歌」。


B-1)Train Leaves Here This Morning(Gene Clark/Leadon)

ByrdsのGene Clarkが脱退後、結成したDillard & Clarkのレパートリーで、A&Mから出た1枚目に入ってたもの。そちらではバッキングに徹していたLeadonが歌うカントリーロック。コーラスでMeisnerが、大きくフィーチャーされている。Hearts & Flowers、D&C、FBB、といったカントリーロックの名門を渡り歩いた、Leadonはほとんどノンキャリアの、FreyやHenleyにとって憧れの存在だったのだろうか。

B-2)Take The Devil(Randy Meisner)

Henleyの2曲に対し、Meisnerは3曲のリードを取るという具合に、ここではそれまでの経歴が、優遇されてた感もある。童顔ながら最年長のMeisnerは、ローカルバンドのPoor(最近音源がCD化)を経て、Poco、Stone Canyon Band出身だから。ただこの曲は,老婆が孫に伝えるような、古いカントリーバラッドのタイプ。エコーをかけた"Take the devil〜" のところの古くささは今では笑える。これもステージでは演奏されてないようだ。

B-3)Earlybird(Leadon / Meisner)

カントリー・ロックというよりは、ブルーグラス調で、Leadonがbanjoを弾き歌う。イントロのピヨピヨは、recorderの様な物で、映像ではLeadonが吹いていた。ステージではpianoで代用というパターンもある。スライドは、Frey。初期のステージでは、そのままLeadonのbanjoのソロ(インスト曲)になだれ込むというパターンも。邦題は「早起き鳥」。

B-4)Peaceful Easy Feeling(Jack Tempchin)

72年当時、Tempchinとどういうきっかけでメンバーが交流を深めたのかは不明だが、彼の名前を知らしめた曲ではある。Leadonのstringsbenderをたっぷりフィーチャーした、後期Byrds的なカントリー・ロック。リードを取るFreyは、「Poco的」と語っている。Tempchinは、その後Funky Kingsを経て、77年に出したソロでもこの曲を、再演。よりカントリー色の濃いヴァージョンで、そのアレンジで、GFは、81年の初来日公演にてプレイした。3枚目のシングルで、#22まで上昇(シングルの邦題は「愛の安らぎ」だった)。

B-5)Tryin'(Meisner)

ラストは再びMeisnerの曲だが、B-2よりはいいけど、あと1つ何かが足りない感じ。テンポの速い、たたみ掛ける様な曲だけに惜しい。これは初期の映像が残っている。邦題は「トライイン」だが、これは「トライン」の誤り。


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初回日本盤LPは、当時東芝音工(現在の東芝EMI)からリリース。
僕が所有してるのは、74年ごろにワーナー・パイオニアから出た「イーグルス・ファースト」。アメリカ盤は、初回はダブルジャケ(gatefold)で、今回の紙ジャケCD化にもそれは生かされている。

*Get You In The Mood(Frey)
未だにLP/CD未収録で、前回の2枚組アンソロジー・リリースの際、収録の噂もあったデビューシングルA-1)のB面曲。まあ、Freyが封印したくなる気持ちはわからんでもないけど、そのルーツであるデトロイト時代をほうふつさせるブルージーな感じもある。リードはFrey。
例によって「All Those Years」に収録。