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誰が言ったのか、「犬ジャケにハズレなし」というフレーズがある。主にssw系、アメリカン・ロック系のジャンルに関して、エサ箱を漁る目が血走ったマニアたちの迷ったときの「ひみつの呪文」のような気がしないでもないけど、手持ちで犬ジャケを並べてみると、なんとなく傾向が知れようというもの。これは「犬ジャケ」ではなく正確には「人と犬ジャケ」ではないのか?
そういうものではないけど、とりあえず犬ジャケの10枚。例によって順不同(ちなみに猫派ですけど・・・)
・One Man Dog / James Taylor ('70)
JTの場合、ワーナーの初期3枚はどれも似たような手触りなのだけど、セクションが全面的に加わった通産4枚目では、後半の組曲も含めて音楽的により複雑化している。シングルの"Don't Let Me Be Lonely Tonight"は近年クラプトンがカヴァー。カヌーに乗りながらネクタイしなくてもいいのにね。この1曲なら"Nobody But You"。
・Bobby Charles ('72)
有名なベアズヴィル盤。これぞウッドストック・サウンドという感じ。水面に映ったボビー・チャールズと犬の姿がなんともいい味わいをだす。1曲選ぶなら"I Must Be In A Good Place Now"。豪華ゲストも魅力。最初に買ったのは80年にCBSソニーから再発された日本盤LPだった。
・Just Another Diamond Day / Vashti Bunyan ('70)
今年奇跡の来日を果たした英フォークsswの幻のアルバム。70年にPhillipsから出た本作は、00年にSpinneyからCD化されるまで存在すらあまり知られてなかった1枚で、ノンコマーシャルな素朴で牧歌的な歌の数々は、はかなげなヴァシュティの歌声と共に忘れられない輝き(それは決してキラキラしたものじゃないけど)を放つ。元々アンドリュー・オールダムの元でガールシンガーとして60's半ばに登場し(ジャガー=リチャーズの作品を歌った)、個人的にはそっち方面の人として記憶してただけにこんなフォーキーなアルバムがあったこと事態ビックリだった。更に去年カムバックし、新作が届けられたが、そちらもあまりの「変わらなさ」にビックリ。1曲となれば"Timothy Grub"でしょう。夜が白み始める頃の風景にぴったりの歌。
・Deja Vu / Crosby Stills Nash & Young ('70)
CSN&Yにグレッグ・リーヴス、ダラス・テイラーを加えた6人にお供するように犬が1匹。ヘンリー・ディルツによるジャケットも素晴らしい。個人的にはヤング抜きの1枚目に軍配を上げたいが、いくぶんサイケな味わいがある本作も捨てがたい。原題は「既知感」の意味だが、リリースされた70年当時もどこかで聞いたことあるような懐かしい音だったのか?だとしたら実に深いタイトルだ。スティルス贔屓の僕としては"Carry On"になってしまうのだけど。今回選ばなかったけど、ニール・ヤングの2枚目にも犬はいる。
・Dog And Butterfly / Heart ('78)
これは少し質感が異なるけど、シアトル出身のハードロックバンドの4枚目。フロントに立つアン(vo)とナンシー(g)のウィルソン姉妹の美貌ばかりがクローズアップされたが、78年の本作ではアコースティックな味わいとポップなハードロックが、まさに静と動の絶妙なコントラストを見せる。元々はレッド・ゼッペリンをアイドルとしていた関係、次作からはヴィジュアル的にもロックなファッションをアピールし、初期の繊細さが失われたような気もする。ベストともいえるタイトル曲"Dog & Butterfly"はフォーキーなムード。ジャケットは東洋風。日本盤LPはCBSソニーから暖簾分けし独立したエピック・ソニーの第2回リリースの1枚だった(ちなみに第1回リリースはボストンの「Don't Look Back」)。
・Indian Summer ('70)
これも質感は違うなあ。バーミンガム出身の4人組のLP。RCA傘下のアンダーグラウンドなレーベル、Neonからリリースされたもので、キーフによるジャケットがなんとも不気味なタッチ。ハードロックでもプログレでもない、あえていえばオルガンロックなのだけど、ボブ・ジャクソンの弾くハモンドの暗く引き込まれるような味わいは、英国ロックならでは。"Emotions Of Men"がいい。
・Uncle Charlie And His Dog Teddy / Nitty Gritty Dirt Band