ケイト・テイラー

シスター・ケイト
■Sister Kate / Kate Taylor
テイラー一家の長女、ケイトのデビュー作は、71年、Atlantic傘下のCotilionからリリースされた。prodは兄ジェームズとの仕事で知られる、ピーター・アッシャーでかなり豪華なゲスト陣。バックは、ダニー・クーチ(g)、ジョエル・オブライエン(ds)、チャールズ・ラーキー(b)、ラルフ・シュケット(kb)、アビゲイル・ヘインズ(vo)のジョー・ママにキャロル・キング(p)が加わったものが基本線で、リー・スクラー(b)、ラス・カンケル(ds)、クーチの3/4セクション(この場合にはkbにシュケットかキングが加わる)のパターンもある。
どちらもクーチのgが大活躍で、ワウを使ったトリッキーなプレイがめまぐるしい"Ballad Of A Well Known Gun"が素晴らしい。目立つことはないがラーキー(言うまでもないがキングとクーチとラーキーはザ・シティのメンバーだった)のbassも印象的。テイラー一家のレパートリーから兄ジェームズの"You Can Close Your Eyes"、"Lo And Behold"、弟リヴの"Be That Way"がセレクト。特にハイライトとともいえる"Lo And Behold"はケイトのゴスペル的素養が見出せるもので、やや線は細いが低音のパンチの効いた歌声を聞かせる(ブルージーな"White Lightning"もそう)。途中バーズやドゥービーもとりあげた"Jesus Is Just Alright"が挿入され、ゴスペル風のクワイアも大いに盛り上げるが、JDサウザー、ジョン・ビーランド(スワンプウォーター)といったリンダゆかりのgtristも参加している。フォークの文脈で語られることが多いテイラー一家だが、ことケイトにいたっては、CBSからソウルのカヴァー中心のLPも出すので、R&Bに親しんだ度合いは深いのかも。oceanさんの指摘もあったが、英国sswの曲が5つ取り上げられている。エルトン・ジョンが2曲―"Well Known Gun"と"Country Comfort"。どちらも「Tumbleweed Collection」からで、後者はロッド・スチュワートやダイアン・デヴィッドソンもカヴァーしたもの。ここでは若きリンダ・ロンシュタットのコーラスが聞ける他、イーグルス結成前夜のバーニー・リードンがgで参加(banjoはジョン・ハートフォードだが)。後期マンフレッド・マンからソロになったマイク・ダボの"Handbags & Gladrags"は、クリス・ファーローが取り上げたこともある有名曲。ハニーバスのピーター・デロの"Do I Still Figure In Your Life"はジョー・コッカーの1枚目が有名と、選曲的に当時としては旬のものを選んだようだが、誰かが取り上げた曲ばかりでやや新鮮味に欠ける部分はある(それでも、すぐわかるJTのアコギが入った後者はかなりいい)。意外なのはジョン&ビヴァリー・マーティンの「Stormbringer」に入っていた"Sweet Honesty"が取り上げられていることで、これは現代的なブルーズ。とりわけクーチの高速gが目立つ。スクラー=オブライエン=シュケットの変則メンバーだが、ほっとくと延々ソロが続きそうなほど演奏はノリにノッている。この「英国志向」はアッシャーの意向もあるだろう。