ハットフィールド&ザ・ノース

ハットフィールド&ザ・ノース(紙ジャケット仕様)
■Hatfield & The North
カンタベリー系とは、そう呼ばれるアーティストの多くは、英国南東部のケント州カンタベリー周辺の出身で、まあ大雑把にくくるとプログレッシヴ・ロックとして日本ではかつて紹介されてたもの。歌詞や演奏に見られる奇妙なユーモア感覚、ジャズに傾倒した音楽性、高度な演奏技術、バンド間の密接な交流が生む仲間意識などひっくるめて全部好きというファンは多い。元々はワイルド・フラワーズ、そこから生まれたキャラヴァンとソフト・マシーンを母体としているが、マシーンのds、ロバート・ワイアットが結成したマッチング・モールのメンバーだった、フィル・ミラー(g)、キャラヴァンのリチャード・シンクレア(vo,b)、デリヴァリーのピップ・パイル(ds)、エッグ、カーンのデイヴ・スチュワート(kb)が結成した4人組が、ハットフィールド&ザ・ノース。
初期のヴァージンから出した2枚はどちらもいいが、一般的な評価の高い2枚目よりも個人的にはこのファースト。全曲メドレー式につながっていて、特に旧A面の流れは素晴らしい。特に"Rifferama"。el-p、organと縦横無尽に弾きまくるスチュワートとノイジーなソロを聞かせるミラーの対決に、クールに自己主張するリズムセクション。挿入されるサウンドコラージュなど、カンタベリーのユーモア感覚を象徴する1曲。歌の入った曲よりも演奏に重点を置いたものの方が多く、その分シンクレアの歌う"Bog Job"、スキャットが楽しい"Aigrette"が引き立つ。"Lobster In Cleavage Probe"などコーラス隊のノーセッツ(アマンダ・パーソンズ(後にナショナル・ヘルス)、バーバラ・ガスキン(元スパイロジャイラ)、アン・ロゼンタール)が彩りを加える曲もいい。車椅子に乗ったロバート・ワイアットが歌う(先日発掘されたライヴでも披露)"Calyx"は、カンタベリーの道案内的なサイトのタイトルにも使われたこれまた名曲。
家々の屋根の向こうに広がる曇り空に宗教画がオーヴァーラップする印象的なジャケットで、もうすっかり参ってしまったのは高校の頃。学校帰りのレコードショップ(以前書いたこともあるKOIKE)で英国盤を購入。