イーグルス

呪われた夜
■One Of These Nights / The Eagles
前作「On The Border」からドン・フェルダー(g)が加わり5人組となったイーグルス。初の#1アルバムとなった4枚目の「One Of These Nights」では、従来のカントリーロック・スタイルを卒業し、一皮向けた感じとなった。ただバーニー・リードンが受けるプレッシャーは相当なものだったようで、ここではリードンがからむ曲は出来はともかく明らかに異質だ。ジム・エド・ノーマン(ドン・ヘンリーのシャイロウ時代の同僚)がarrしたstringsが大げさなインスト"Journey Of The Sorcerer"は、デヴィッド・ブロンバーグ(fiddle)が加わっているが、ひょっとしてリードンしか参加してないのではないか?と勘ぐられてもおかしくないし、ラストに収められた"I Wish You Peace"は、ポピュラー・ミュージックのスタンダード的なarr。共作者としてクレジットされたパティ・デイヴィスは当時のリードンのGFで、レーガン米大統領の娘。ドン・ヘンリーはパティが共作者としてクレジットされた曲が、アルバムに入ることを最後まで反対し、この曲を"I Wish You Pee"(おしっこ)と呼んだといわれる。
タイトル曲は、ドローンとしたイントロのbassがなんともカッコいい曲で、ランディ・マイズナーのしなやかな躍動感を持ったプレイが印象的。ソウルへの傾倒(ヘンリーは特にギャンブル&ハフ作品と挙げている)ぶりが伺われる。バーニーの弟、トム(この76年にシルヴァーを率いてアリスタからデビュー)が曲作りに参加した"Hollywood waltz"はゆったりとしたカントリー・ロックで、リードンはmandolin、steelをプレイ(エンディング出てくるsynは録音されたクライテリア・スタジオのミュージシャン、アルビー・ガルテン)。隠れた名曲ともいえる"After The Thrill Is Gone"は、グレン・フライとヘンリーがvoを分け合うミディアムテンポのナンバー。隠し味的なsteelが心地いい。
そのフライは、辛辣な歌詞が印象的な(まあ援助交際の歌だが)"Lyin' Eyes"を#2まで上がるヒットとさせる。いかにもグレン・フライといったイメージのさわやかな曲。なぜか単独でフライが歌う曲はこれしかなくて、いつになく民主主義というか、マイズナーが2曲、フェルダーが1曲ある。
マイズナーの代表作となった"Take It To The Limit"は、ゆったりとしたメロディーが印象的だが、実はこの曲を支えてるいのは、ジム・ノーマンのpianoでありstringsである。これがないライヴ・ヴァージョンは妙に間延びしてしまう(好みだが)こともあって、「Live」ではstringsをなんとダビングしてしまっている。おそらく日本人が一番愛したイーグルスのナンバーの1つではないか。ランディが日本でこの曲を歌うと、もう集団ヒステリーだよ、とはフライの弁。確かに黄色い声援だった。
フェルダーは、後年作曲者としてのクレジットに自分の名前を載せないと、メンバー(というか、株式会社イーグルス(つまり、グレン&ドン)を告訴し解雇された人だが、まるでソロアルバムのようなナンバーが"Visions"。ホントのソロにこういう曲があればよかったのに…