大瀧詠一

大瀧詠一
大瀧詠一
はっぴいえんどの「風街」と「Happy End」の間の72年にリリースされた大瀧詠一のファーストソロがベルウッドから出た「大瀧詠一」(瀧の字に注目)。現行のダブル・オー(Yoo-Loo)から出たCDには、シングル曲、別ヴァージョンが収められているが、オリジナルはアカペラの小品、"おもい"でスタート。この目くるめくようなコーラスの魔術。エヴァリー兄弟風とはよく言ったものだ。これがベストトラック。吉田美奈子のfluteの入った"指切り"は、シュガー・ベイブやピチカート・ファイヴのカヴァーもあるが、湿った日本的世界。"それはぼくぢゃないよ"や"乱れ髪"もそうだが、松本隆の詩の世界は、ここでは特に林静一の漫画を思い出させる。"びんぼう"(後年ウルフルズがカヴァー。prodが伊藤銀次だったのが何かの因縁のようだ)や"あつさのせい"で聞かれるシンプルなロックンロール(パンク的な)も、"恋の汽車ポッポ"(アルバムでは第2部、シングルヴァージョンが第1部)で聞かれるポップスへの傾倒も初期の大瀧ならではのもの。でもあまり聞くことはないのだなあ。「A Long Vacation」以後の大滝(滝の字に注目)にまったく魅力を感じない僕としては、ナイアガラ初期こそ大滝といったイメージが強い。