#6〜Take It To The Limit

誰にでも代表曲と呼ばれるものがある。ただそれが強いイメージを持っていると、その曲に縛られてしまうのも事実。それをあえて避ける人生もあれば、甘んじて受け入れる人生もある。
ポコのオリジナルメンバーとして、イーグルス結成に加わったランディー・マイズナーは、童顔ながらバンド最年長だった。ハイトーンのコーラスで曲を引き締める重要な存在だったが、3枚目「On The Border」での2曲のリード・voで注目された。そのマイズナーといえば、4枚目「One Of These Nights」に入った”Take It To The Limit”がやはり代表作。フライ=ヘンリー以外のメンバーの歌がシングルになったのはこれが初めてで、#4まで上昇。ゆったりとしたリズムにカントリーっぽいメロディーが絡むミディアム調のナンバーで、隠し味として使われているジム・エド・ノーマンのストリングスが絶大な効果をあげている。実際このストリングスがないと間延びしたような印象を受け、非公式なライヴヴァージョンはどれもイマイチだった。バンドもそれをわかっているのか後に公式に出た「Live」ではストリングスをダビングしている。
呪われた夜
ツアーから来る疲労を理由にイーグルスを抜けたのが77年。故郷のネブラスカに帰って農場をやるという話もあったが、音楽の道断ち切れず、78年にアサイラムよりカムバック。そのアルバム、タイトルは「Randy Meisner」だったが、邦題は当然「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」。件の曲のセルフカヴァーが入っていたから。それはもうユルいカントリーロックだった。
その後もマイズナーはソロ活動を続け、女性に熱狂的な支持を受けた日本での思い出を忘れず、日本向けに80'sにライヴ「Dallas」をリリース。数年前にジャケットを変え再発されたのがこれ。
Dallas

その曲調からカントリーのアーティストのカヴァーが多いが、総じてそれは原曲をなぞるようなもの。あっと驚かされたのはNYのssw、フランク・ウェバーのカヴァー。80年にRCAから出た「Frank Weber」に収められたそのカヴァーは、16ビートに生まれ変わった都会的なarr。言われるまでは気がつかない解体ぶり。そしてラストでオリジナル作品へのリスペクトをあらわにするようなオリジナル・テンポに戻ってのエンディングが憎い心遣い。sswとはいってもこういったカヴァーの方が際立ってしまうあたり悲しいのだが、この1曲で忘れられない存在となった。
ニューヨークのストレンジャー

デイヴ・メイスンがステージでカヴァーしたヴァージョンも、初めて聞いたらびっくりだったろう。アコースティック・セットの中で歌われる曲は、もちろんイーグルスのヴァージョンにはかなわないが、意外なところでこの曲が愛されてたことを知る。泣きの曲がイメージ強いけど、この「情念」という邦題がついた「Certified Live」では意外とファンキーな曲もある。リック・ジェイガー(ds)、マイク・フィニガン(kb)、ジム・クリューガー(g)、ジェラルド・ジョンソン(b)にメイスンのバック。
ライヴ?情念