tear#3

Pretender
■Here Come Those Tears Again / Jackson Browne
交差点を渡ろうとするジャクソン・ブラウンの姿をとらえたジャケットが印象的な「The Pretender」('76)は、「Running On Empty」で知ったジャクソンを振り返って聞いてみようと、購入した1枚。高校1年だったかな。歌詞カードを眺めつつ、その真面目というか真摯な世界観に、ちょっと重いなあ、と思ったことを覚えている。社会に対す警鐘というのは、プライヴェートな出来事、心象風景をスケッチした初期のいかにもssw然とした作風(詩の世界)から、少し離れ前作「Late For The Sky」での"Before The Deluge"でも伺われたけど、このアルバムでは、一見父と子のかかわりを歌ったものですら、裏の意味があるのでは?と勘ぐってしまう。
そんな中、トロピカルな"Linda Paloma"と"Here Come Those Tears Again"だけは、このままの意味だろうなあ、と思う。レコーディング中に夫人のフィリスが自殺して、リリースも相当遅れてしまったが、当時はジャクソンも相当傷心で〜と海の向こうの僕らは気遣ったものだけど、後から知れば相当の女性好きというか、放蕩ぶりで、このあとリン・スウィーニーとのいきさつ(「Hold Out」はそのまま、彼女に関する歌が集められた)やら、女優ダリル・ハナーとの浮名など、数限りない。さてこの曲は、フィリスの母、ナンシー・ファーンズワースとの共作で、彼女を失った失恋の歌なのだけど、それまでのジャクソンの曲にはなかった、コンテンポラリーなソウルフルな味わいもある。prodは音楽評論家で、ブルース・スプリングスティーンを手がけた、ジョン・ランドー。曲によっていろんな人が参加しているが、ここでは、ジム・ゴードン(ds)、ボブ・グロウブ(b)、フレッド・タケット(g)、マイク・アトレー(org)、ビル・ペイン(p)など。ジョン・ホールの途中のgソロが、意外と覇気がないのが残念だけど、後半フィーチャーされるボニー・レイットローズマリー・バトラーの女性コーラスが強力。特にバーサというガールズ・バンド出身のバトラーの名前を一躍知らしめた名演だ。
    おまけ
この時期の動画は少ないけど、「No Nukes」での"Running On Empty"が見つかった。かつてはVHSならぬVHDでしか出てなかったこの映画は、DVDになったのかな?こちらは、ラス・カンケル(ds)、クレイグ・ダーギー(p)、デヴィッド・リンドレー(lapsteel)、グロウブ(b)の布陣。バトラーもコーラスで姿が見える。ちらりと写る女性percは、ココモにいたジュディ・リンスコット。