ザ・バン道その2

The Last Waltz
つづきです。
83年の来日公演はその後「The Band Is Back」としてヴィデオ化されたけど、どう贔屓目に見てもドサまわり的な哀愁があった。87年にホット・ツナのヨーマ・コウコネンをゲストにして来日公演があったが、あれはリチャード・マニュアルの自殺以後だった。そう86年にはリチャードが、首を括って死んでしまった。ドラッグ、アルコール問題があったようだが、僕はとてもショックだった。このまま先の見えないクラブ回りを続けるのかと自問していたのだろうか?
この時期、就職の為上京。ブート音源がいろいろ出回り始めた事もあっていろいろ聞いてみるが、どれも演奏が荒く残念。改めて2枚のライヴ盤の完成度(スタジオで音を重ねたにしても、ちなみにライヴ盤を作るのにあたって、手を加えることには既に寛容になっていた、それだけ大人になったのか)がわかる。ザ・バンド以上にザ・バンド周辺のウッドストックサウンドに目覚めたのもこの頃で、多くの愛すべきクローンを探したものだった(その最高峰がキャプリコーンのブルー・ジャグでしょう)。救いはちゃんと聖典を聞き込んだ上で亜流を探してたこと。聖典に及ばない事は承知の上だった。
ブルー・ジャグ(紙ジャケット仕様) Silver Pistol ハングリー・チャック+2(K2HD/紙ジャケット仕様)
左からブルー・ジャグ、ブリンズレー・シュウォーツの「銀の拳銃」、ハングリー・チャック
Robbie Robertson
87年にロバートソンが沈黙を破りソロをリリース(それまで映画がらみの仕事「カーニー」、「キング・オブ・コメディー」でお茶を濁してきた)。そこにはダンコも参加し旧メンバーとの緊張もやや緩和されたかのようだった。ほとんどの曲を書いていた人だけあって、ザ・バンド的な味わいはもちろんあるし、何よりも昔をふり返ったものではなく今日的な音作り(prodはダニエル・ラノワ)だったので安心。ただ人工的な音とみるかで評価が分かれそう。僕はもう15年は針を落としてないが・・・

(追記)Backstreetさんのレスに書きましたが、"Somewher Down The Crazy River"の歌詞の一節、「59年型シェヴィーのバックシートでリトル・ウィリー・ジョンを聞いている」(レスの歌詞が間違ってました)というのに、当時シビれてました。失われてしまった南部の風景を見るようで・・・
これがそこからのシングル。でもセールス的に失敗。
To Kingdom Come
勢いでロバートソンがリマスターした2枚組ベスト「To Kingdom Come」が89年に出て、モコモコした音がクリアによみがえって当時話題となった。ワトキンズ・グレンのライヴも一部収められこれが、ザ・バンド再評価につながる。90年にはベルリンの壁で行われた、ピンク・フロイドがらみのイヴェント「The Wall Concert」、92年にはディランの芸能活動30周年ライヴに出演。後者はシニード・オコーナーへのブーイング事件が有名で、BSでOAされたが、ザ・バンドは地味だった。
Jericho
新メンバーを加え、93年に「Jericho」をリリースし、翌年3度目の来日。これは圧倒的に若いファンが多かった。CDの時代となって過去のカタログが手軽に聞けるようになり、オッサン気な音楽を好む若人も多くファン歴も15年になり、いつしか初来日の時に僕が感じたような年齢にさしかかる。ステージは可もなく不可もなし。もはやあの伝説のバンドが〜と言うような感激もなくなっていた(初来日は確かにチープだったけど、"Rag Mama Rag"のリヴォンがマンドリン弾きながら歌いだしたとき確かに電流が走ったのだ)。

但しロバートソンとの確執は相変わらずで、リヴォンは「軌跡」というザ・バンドの歴史を紐解いた本を出版。日本ではFM東京出版から出たが、同じ頃「流れ者のブルース」(バーニー・ホスキンス)と言うザ・バンド本も邦訳されちょっとしたブームとなった。ここで公式に両者の溝が深い事が明らかになる。この年には、3枚組ボックスも登場して、僕は下北のレコファンで買ったけど、やはりこのグループはベスト盤というのは似合わない。

そのボックスで一部紹介されたワトキンズ・グレンでの73年のライヴがCDで登場。後にこれは「Rock Of Ages」のアウトテイクと判明し、キャピトルの偽装ぶりが露呈。それ以降このレーベルを僕は信用していない。個人的には「ザ・バン度」はこれ以降下がり続け、「High On The Hog」も「Jubilation」も買うことはなかった。99年にダンコがドラッグ問題で来日しながら強制送還された事件にも苦々しく思った。
それでも、00年にはキャピトル音源が大量のボーナスと共にリマスターされた時には僕は飛びついた。最初は日本盤CDを買ったが、詳細な英文ライナーの訳が付いてないのに激怒して、それから米盤になった(「Stage Fright」はまだ買ってない)。02年には「The Last Waltz」の完全版が出た。DVDも買った(初めて買ったDVDソフトだった〜ちなみに初CDはロジャー・ニコルス&スモール・サークル・オブ・フレンズ)。05年に出た2枚目のボックスにはまだ手が届かない。