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All Things Must Pass
16■All Things Must Pass / George Harrison
"My Sweet Lord"はもちろん知っていたけど、実際にこの3枚組を耳にしたのはずいぶん後になってからです。ジョージ・ハリスンの3枚目(最初の2枚は映画のサントラと電子音楽という、どちらも実験的なインスト集)の「All Things Must Pass」について書かれた文章は、かなりの確率であの箱は高くて手が出なかった…というくだりがありますが、ナンバリングされてビートルズのLPが一斉に再発された77年頃(「Rock'N'Roll Music」というオムニバスが出たのもこの頃で、何度目かのビートルズブームでした)ですら、この箱は5000円した覚え。2枚組が3800〜4000円だった頃の話。おまけに何ともそっけない装丁でした。

全体を包み込む宗教的な「愛」は、レコーディング中に母親が亡くなった事とも関係がある、とは「レココレ」での和久井氏の発言ですが、ゆったりとあたたかなムードがこの3枚組の最初の2枚を覆っています。デレク&ザ・ドミノスが参加して、スワンプ・テイストがフィル・スペクター音の壁で埋もれてしまった、というのも最近になってよく聞かれることです。はじめてこの箱を聞いた80'sの半ば、何だこのモコモコした音は!とびっくりした事を思い出します。"My Sweet Lord"、"What Is Life"といったヒット曲以外のナンバーは意外と地味だったりするけど壮大な"Let It Down"、ディラン風の"Apple Scruffs"、ピート・ドレイクの弾くsteelが音響的に聞こえる"Ballad Of Sir Frankie Crisp"が好きです。
タイトル曲は、高らかに伴奏をつけるhornが印象的なナンバーで、ザ・バンド的なムードもありますが、タイトル曲にしてはえらく地味なのも確か。