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ホールド・アウト

ホールド・アウト

33■That Girl Could Sing / Jackson Browne
ジャクソン・ブラウンの5枚目「Hold Out」がリリースされたのは、80年の夏のことでした。駅前のレコード屋で発売日に買ってから、毎日それこそ浴びるように聞きました。前作はセクションをバックにした新曲、未発表曲で構成されたライヴ盤なので、スタジオ録音盤という事になると、愛妻フィリス自殺後失意のもとでレコーディングされた、と伝えられた「The Pretender」('76)以来となります。リリース当時は新恋人、リン・スウィーニーへのストレートなラヴ・ソングが中心の内容、と伝えられましたが、実際はリリース時にはすでにリンとは別れており(リンの姿は「Running On Empty」のブックレットに見られます)、過ぎ去った愛の日々を懐かし、愛おしく思うさま、かつての恋人への愛情、尊敬が伝わる内容でした。何よりもヴォーカリストとして線が細かったジャクソンが、ここまで歌えるようになったのか!と成長ぶりに驚いた(と言ってもリアルタイムではそこまでなかなか気がつかず、後年続けて聞くにあたってそう思うようになったのです)のです。そしてボブ・グロウブ(b)、ラス・カンケル(ds)、クレイグ・ダーギー、ビル・ペイン(kb)、デヴィッド・リンドレー(g)によるバックの演奏も、従来以上にロック度を増し、ハード・エッジな音作りでした。LAの音にニュー・ウェイヴの影響が本格的に伝わるのは、ちょうどこの頃ですが、「Hold Out」においては、ガレージ風のロックンロール"Boulvard"にその影響がちらりと見られる程度です。ディスコ音楽に毒されたシーンへの警笛となる"Disco Apocalypse"、夭逝したリトル・フィートローウェル・ジョージへ捧げられた"Of Missing Persons"、そして"Hold Out"、"Hold On Hold Out"といったナンバーでは、ブルース・スプリングスティーンからの影響も感じられます。
"That Girl Could Sing"は、曲の輪郭部分のハードエッジなgが印象的なナンバーで、"Boulvard"(#17)に続くシングルとしてカットされ、#22まで上がりました。アルバムの方は#1になっています。